書評『続・猟銃』まさに「撃つ瞬間の理論」という本ですね
今日ご紹介するのは『続・猟銃』という本。サブタイトルが『撃つ瞬間の理論 どうすればあなたの銃は当たるか?』となっており、このサブタイトルこそが、この書籍のことをズバリと言い当てています。
この書籍全体を通して、まさに撃つ瞬間の話です。
狙いを定め、引き金を引く。そのときの銃の作用、身体の作用、心の作用について語られています。
『続・猟銃』
さて、本の内容に入る前に、上に挙げたAmazonへのリンクを見てください。こちらの書名は『猟銃』となっており、本日わたしが紹介する『続・猟銃』とは違います。しかし、よく見るとサブタイトルである『撃つ瞬間の理論 どうすればあなたの銃は当たるか?』という部分はまったく同じです。
この『猟銃』と『続・猟銃』の違いについて『続・猟銃』で説明されていますので、これから購入を検討している方のためにご紹介しておきます。
昭和52年に集大成的なものとして『猟銃——撃つ瞬間の理論——どうすればあなたの銃は当たるか?』を出版したが、ひとつの事柄を書いてしまうと、もっと別の表現方法がより適切ではなかったか、など反省や異なった対応策が次々と生まれてくるもので、今回は補筆の意味も兼ねて、昭和59年3月から『全猟』に「続・撃つ瞬間の理論」のタイトルで連載した記事を加筆補充し、時には別の角度から詳述してみた。
引用:続・猟銃「はじめに」
わたしは『猟銃』の方を持っていないため、正確に比較することはできませんが、この「はじめに」の内容を読む限り、「骨子は同じだが、より良いものとするために加筆修正した」という理解で良さそうですね。
実はAmazonには『猟銃』しかなく、『続・猟銃』が扱われておりません。どうせ買うなら新しい方を、と思われる方はネットで検索すると販売している銃砲店もありますよ。たとえば——
『続・猟銃 撃つ瞬間の理論』|浜田銃砲店
『続・猟銃 撃つ瞬間の理論』|信田銃砲火薬店
他にも売ってるお店もあるかもしれません。もし懇意にしている銃砲店がありましたら、問い合わせてみてください。
射撃の技法
すこし銃に慣れてきた方だと「銃が当たる当たらないって言ったって、クレー・静的射撃・猟などでずいぶん違ってくるでしょ。この本はどれをターゲットにしているの?」と思われたかもしれません。
わたしも思いました。表紙を見ると、上下・水平・ボルトアクションと3丁の銃が並んでいます。わたしで言えば、、興味の大部分は静的射撃です。もしクレーの話ばかりであれば(それでも読んだでしょうけれど)、ちょっと残念。
で、この本ではこれらの射撃のスタイルの違いを、ただの競技の違いとしてではなく、「同じ射撃という行為の中での性質の違い」として捉え、包括的に扱っています。それは目次を見ても明確です。
■射撃の技法
1 射撃の二大前提条件——各種の射法
[A]静止目標の場合
[B]ゆっくりした移動目標の場合
[C]急速に運動する目標の場合
クレー・静的射撃などとジャンルわけせず、同じ射撃というカテゴリの中で取り扱おうという意図を感じます。当然[A]は静的射撃、あるいは動かない獲物を狙う猟を指していて、[C]はスキートやトラップ、あるいは飛んでいる鳥などを想定。[B]はその中間、動的射撃であったり、ゆっくり逃げる獲物を狙う猟などを対象としているようです。
「スキートではこう」「トラップではこう」という、競技ごとの技術もあるとは思いますが、猟のための射法を身につけたいわたしとしては、この分け方の方がはるかに腹に落ちます。
これらの状況ごとに、引き金の引き方、据銃の仕方など、子細に渡り解説されており、とても勉強になります。ひとつ例を挙げると「[A]静止目標の場合」の一部です。
(狙いが)安定したら引鉄を絞ってゆく、すでに引きの方は撃発期間に入っている。もし撃発前に狙いが動いたならば、引き鉄の加圧はそのままに停止させ、再び狙いの安定をはかり、安定を知覚したら再び引鉄の加圧を高める。通常2〜3回、慣れないうちでも4〜5回、以上の作業を繰り返すうちに、安定時に自然に撃発されることになれば大成功である。
『続・猟銃 [A]静止目標の場合』
これなどはわたしにビビッときた内容でした。
最近、とにかくスラッグ射撃をがんばっていますので、この「引鉄の引き方」というのが大きなテーマになっていました。
大前提として、銃口の揺れは絶対に止まりません。止まらないということは、揺れている中で「1番真ん中に当たりそうなとき」に引鉄を引かなくてはいけないわけですが、この考え方だと「今だ!」というタイミングで引いてしまい、まず第一にガク引きが多発します。第二に、ガク引きが起きないとしても「今だ!」と脳が指示を出してから、指先が動き、撃発機構が動き始め、雷管を叩き、火薬に引火し、弾が銃口から出ていくまでの間の時間に必ず狙いがズレてしまうわけです。
——つまり当たらない。
だから言葉にするとわけが分からないのですが「撃とうと思わずに撃つ」くらいの感覚が正しいのだろうと、最近は考えています。実際、わたしでも調子が良いときは、脳が指示を出したという認識はありません。むしろ指が勝手に引鉄を引いてから、脳がそれを認識するという感覚です。
このことを、うまく言葉にしてくれているのが、先ほどの引用文だと思うのです。「狙いを定める → 引鉄を引く圧を高める → 狙いを定める」を繰り返し、「安定時に自然に撃発される」というわけです。この「自然に撃発される」こそ、わたしが思う「指が勝手に引鉄を引いてから、脳がそれを認識する」に近いのではないか、と思っています。
とまぁ、引鉄の引き方1つ見ても、語っても語りきれないくらい深い内容です。マニアックすぎるくらい深いです(笑)。
延々と語られる銃のこと
この本、実は射法に関してはそれほど長くは語られていません(とはいえ、先ほど書いたように十分に深い内容です)。
むしろ重きを置かれているのは「銃そのもの」のこと。ページ数を見れば、それは明らかです。
射法(射手に関するもの) → 51ページ
銃 → 221ページ
心理 → 44ページ
という具合。圧倒的に銃の話題が大半です。これもマニアックですよ〜。銃の各部位ごとに「なにが理想か」を語り続けます。めちゃくちゃ深いです。
なにしろ著者は今村義逸氏。銃砲年間の創刊者であり、『全猟』『狩猟界』で銃器欄を長期担当。メーカー各社の生産技術指導にあたっていた方です(すべて、本書の著者紹介より)。
深いはずです。
辞書的な本。本棚に置いておきたい。
全体的にとても深く、深すぎてついていけない部分もあります。これについては「本書の読み方・オススメ例」で触れられています。
筆者として「こんな風に読み進んで欲しい」という希望がありますので、お知らせしておきます。
冒頭からどんどん読み進んでください。読み流して頂いても結構です。しかし何となく理解しにくい部分に来たら、中断して次の章に移ってください。次の章を読んでまた分からなくなったら、次の章へ。つまり読者が理解できる範囲で、まずは浅く広く読んで頂きたいのです。
『続・猟銃 本書の読み方・オススメ例』
わたしはまさにこの読み方をしました。今のわたしの興味や理解に合う部分もあれば、「それを言われてもどうして良いものやら……」「どう違うの!?」と理解が追いつかない部分もたしかにあります。そういうときはサクッと飛ばして、次の章に行ってしまいました。
あとは家の本棚に入れておいて、「う〜ん、グリップの仕方が分からないなぁ」とか悩んだときに、本書を開いて、グリップについての章を読めばいい。
1度ザッと読んだら、あとは辞書的に活用するのが良いかな、という本です。
たしかに安い本ではありません。4000円以上はします。だけど、これだけあれこれ網羅されている本は多くありませんし、これだけの知見を得られるならありだと思いますよ。
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