ベテランハンターさんに聞いた、犬なし単独でイノシシを獲る話

最終更新日

猟期の後半、猟場に入る林道でとあるハンターさんに声をかけられました。

いろいろ話をしてみると、超ベテランハンターで、雑誌などでも紹介されたことがあるお方。この方がとても尊敬できる人格で、しかも猟の腕も立つわけで、いろいろお話を聞かせていただきました。

よい人

山に入ろうとハンティングベストやら鉄砲やらの用意をしていたところ、林道を通った車が近くに停まりました。降りてきてのは80才近い老ハンター。頭の中で警戒音が鳴り響きます。

もしや縄張りの主張? いちゃもんでも付けられるのか? あるいはたまに出会う「へっ! 若者が……」という横柄な人だろうか……。

それほど沢山のハンターに会ってきたわけではないのですが、猟場で出会う年配のハンターで楽しい気持ちになったことがあまりなくて、正直ちょっと警戒心をもっていました。

(誤解しないで欲しいのですが、もちろん尊敬できるハンターもいます)

 

「どうも〜よく見かけるね」と老ハンターが軽い挨拶。心の中の警戒心はグッと押し殺して、笑顔でにこやかに対応します。

どうやらこれまでもわたしの車を見て気になっていたそうです。

「1人? 犬は?」
「いや、犬なしで1人です」

これまで猟場で出会ったハンターはみんな「ひとりで大物? へ〜〜(好奇の目)獲れないでしょ〜」って感じで鼻で笑われることが多かったのですが、この老ハンターは違いました。

「犬がいないと難しいけど、その分勉強になるんだよな。どう? 獲れてる?」
「シカはなんとか。イノシシはまだ難しくて」
「お! シカが獲れてんならたいしたもんだ。おれもな、イノシシを犬なしで獲れるようになるまで何十年もかかったよ。だけど、ぜったいできるから。がんばれな。きみ、いつも朝早くから遅くまでがんばってるだろ? 熱心でいいよ」

なんというか言葉が優しくて、この時点で警戒心は解いていました。

 

猟犬のトレーナー

この方は猟犬のトレーナーだそうです。猟犬をずいぶん飼っているようで「欲しくなったら声かけてな。あげっから」とさえ言われました(多分、売ってあげるという意味だと思います)。

猟犬に関する大会なんかで優勝した経験もあるベテランさん。

「やっぱり、猟は犬だよ。でも犬がいいだけじゃダメ。それを上手に活かすのが人間の仕事」

いろいろ犬の扱いも苦労したそうです。

 

犬なしでも猪が獲れる

老ハンターさん曰く、犬なしでもイノシシは獲れるとのことでした。もちろん犬がいた方がいいけど、いなくてもそれなりに獲れるという意味でしょう。

短い会話でしたが、彼のアプローチはとにかく「足跡を追う」でした。

これはわたしのアプローチとぜんぜん違うんですね。わたしはイノシシがよくいる場所を順番に回っていくというスタイルで歩いていましたが、彼は徹底的に足跡を追って、ねぐらを突き止めるのだそうです。

今では足跡を見ただけで、「そろそろ寝るな」と分かるのだとか。

 

犬なしでイノシシを獲るための訓練

彼がやった訓練は「ひたすら足跡を追う」というシンプルなもの。シンプルですが、難しいですよ〜。

彼は何年も足跡を追い、イノシシを見つけるのを繰り返したそうです。そうしているうちに寝屋もたくさん見つけ、イノシシの行動パターンも学び、挙げ句、閨に入る前のイノシシの足跡のパターンまで理解したそうです。

詳しくは聞いていないのですが、寝屋に入る前に必ずフェイントをかけるそうです。だから、足跡が向かっている方向と、最終的に寝る場所は少しズレるとのこと。秋田のマタギもクマに関して似たような話をしていましたので、野生動物共通の知恵なのかもしれません。

 

非猟期の目標

この話はわたしにとって大きな衝撃でした。まず「犬なし単独でイノシシを獲るのは難しい」という話をよく聞きますが、それなりに獲れる人がいるという事実。これはかなり励みになります。

次にやるべき訓練が見えたこと。

足跡を追ってイノシシを見つける訓練は猟期でなくても出来ます。むしろ鉄砲を持たずに、身を軽くして山に入って、徹底的に足跡を追ってみるのはおもしろいかもしれません。

わたしは次の猟期までこれをテーマに山を歩いてみたいと思っています。

本当に良い出会いでした。感謝。

 

 


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。2022年からはアイヌ犬のイチを連れて一銃一狗に挑戦します。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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