単独猟日記1:初猟でスコープに納めた鹿のことは忘れないと思う

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11月15日。狩猟解禁日。わたしが「狩猟をやりたい」と思い立った2016年8月末から1年と3ヶ月かけてようやく辿り着いた日だ。

大興奮で、前日も眠れないほど。それくらいの喜びで迎えた初日。さてどうなるものやら……。

## いざ猟へ

「最初に行く猟場はどこにしようか」

これがこの1週間ほどの悩みの種だった。大雑把に候補は3ヶ所あり、そのどれもが魅力的。すべての候補地で鹿を目撃したことがあったし、それなりに「気配濃厚」な場所も知っている。猟だけを考えれば、どこに行ってもいいだろうと思いつつ、別の観点から絞り込むことにした。それは「他のハンターがいないこと」。

単独猟だから、ひとりで伸び伸びやりたい。とにかくそれが願いだった。

そこでできるだけ名もない山域で、入山しづらいポイント。そこからさらに奥に入って猟をすることにした。結局選んだポイントは「川を渡らないと入山できず、そこから崖とも言えるようなかなりの急斜面をよじ登らないと入れない」場所だ。この周辺で入山できる場所はこの1ヶ所しかない。自分で歩き回って見つけた場所だった。

結論から言えば、誰ひとりとも会うこともなく、発砲音を聞くこともなかった。大成功だ。

緊張感

MSS-20を猟に連れてきてやれた

実は「初猟」と言いつつ、本当は初猟ではない。有害鳥獣駆除ですでに出猟済みだった。駆除では地元の猟隊で巻狩をする。

巻狩で犬が鳴いた瞬間の緊張感もかなりおもしろいのだが、単独で歩いたときの静かな緊張感もこの上なくおもしろい。枯葉が木から落ちる。カサリと音をたてる。「足音かもしれない」と心臓が鳴る。尾根を回る。その向こうに鹿がいるかもしれない。また心臓が鳴る。こんなことの繰り返しだった。

慣れた人ならもっと力を抜いて歩くこともできるのかもしれない。「この辺はいない」「ここはいる可能性が高い」と判断する力が私の何百倍もあるから。そこが未熟な自分としては、若さを武器に緊張感を維持し続けるしかなかった。

日が昇ってきたのを見て、「こういうときは日が当たる場所がいいと思う」と素人ながらにあたりをつける。地形図を見て、南東向きの斜面を探す。それもできれば広葉樹林帯。広葉樹林帯の方がシカに会う確率が高い気がしている。まぁ、今までそういう場所で出会うことが多かったから、わたしなりのげん担ぎなのかもしれない。

この音は?

日の当たる南東の斜面に狙いを定めて、ゆっくりと歩いていた。Twitterで教えてもらったSLLSという言葉を何百回と自分に言い聞かせる。

Stop, Look, Listen, Smell

つまり、「止まって、見て、聞いて、嗅ぐ」という教えだ。わたしは3歩くらい歩いてはSLLSを繰り返していた。

小さな尾根を越えようとしたとき、僅かに異音が耳に入った。立ち止まる。またカサカサと音がする。尾根の向こう側の、下の方(つまり谷間)から聞こえるのはまちがいない。わたしは尾根の中腹にいて、谷間まで50mほど。音が聞こえる場所まで恐らく100mくらい。

「カサカサ聞こえる音の主はなんだろう? 鳥が地上の虫を食べているか(事実そういう鳥は周りにたくさんいた)、アナグマのような小動物が歩いているか、猪が地面を掘っているか、鹿が歩く音か……」

遠くてハッキリ聞こえないため、なんとも言えなかった。しかし何かがいるのはまちがいない。鳥かもしれないけど、鳥じゃない可能性もある。今日初めての「濃い獲物の気配」。安易に逃がしたくなかった。

「待とう」

過去、猟期に備えて何度も猟場を歩いてきた。そのときの経験上、安易に近寄れば確実に逃げられることは分かっている。鹿に気付かれずに近寄るのはかなり難しいものだ。ましてや初冬の山。地面は枯葉だらけで、音をさせずに歩くのは不可能。ならば待てばいい。もしかしたら、獲物の方から尾根を回ってこちらの視界に入ってくれるかもしれない。そうなればゆっくり構えて撃つことができる。

その場で座り、膝撃ちができる姿勢を取った。弾を装填し、安全装置をかける。「もし来るとしたらココだろう」という見込みは立っている。そこに狙いを定める。多分距離にして70m弱。膝撃ちなら十分当てられる距離だった。

10分……20分……、音は途切れ途切れだが続いている。しかし近付いてくる気配はない。むしろわずかに遠ざかった気がしていた。それに音もハッキリしたものではなく、待てば待つほど鳥の音に思えてくる。事実、自分の周りにも虫を捕りに地面に降りる鳥がたくさんいて、そいつらがカサカサと音をたてていた。その音とそっくりだった。

「だめか〜。やっぱり鳥なんだろうな。ちょっと見にいってみよう」

一応、弾を装填したまま、慎重に尾根を越えることに……。なにがいるんだろう? と期待感はあったが、心の大部分は「鳥だろうな」という思いが占めていた。そして尾根を越えるかか越えないかというタイミングだった。

バサッバサッバサッ! 獣が駆ける音。

え? 鳥じゃなかったのか! 慌てて尾根を越え、音のした場所を見ると、鹿の群れ。対面の尾根を駆け上がっている。5頭か6頭はいる。あるいはもっと……。かなりの急斜面だから、いくら鹿でも駆け上がる足は遅い。よじ登るように登っていく。

「見てる場合じゃないだろ!!!」

猟場を下見していたときは、こうやって鹿を見ればそれで満足だし大成功だった。しかし、今は実猟。見るだけじゃ意味がない。最後尾を登る2頭はまだ尾根を登っている。距離にして50mほど。慌てて銃を構える。スコープを覗く。白い尻が見える。ドタドタと登る鹿の動きは不規則で、わずかにジグザグと縫うような動きをしている。その動きに翻弄される。

(慌てて撃っちゃいけない。バックストップは……? ある。尾根が丸ごとバックストップだ。人は……? いない。可猟区か……? 何度も地図で確認してきた。撃っていいんだよな? 本当にいいんだよな? これって撃っていいシチュエーションなんだよな?)

……と自問していると鹿は藪の中に逃げ込んでしまった。そして、尾根に身を隠しつつ尾根の向こう側へと逃げた。自問していたのは本当にコンマ数秒だと思う。何秒もチンタラと考えていたわけではない。それだけ撃てるチャンスが短かった。

銃を下げる。手が震えてる。逃げていったシカの行く先をボンヤリと見ていると、また尾根の下で鹿の音! 逃げ遅れたのろまな鹿がもう1頭いたのだ。慌てて銃を構え直すが、そいつは運のいいことに(あるいは賢いのか)、始めから藪の中を駆けていった。スコープの中に捉えることもできなかった。

その場で座り込んでしまった。

「……撃てたよなぁ……撃てたよなぁ」

そればっかり考えた。今のは絶対に逃しちゃいけないチャンスだった。鹿の存在には鹿より早く気がつけていた(音を聞いていた)し、逃げるルートをだって事前に想像できた。対面の尾根を駆け上がることくらいわたしにだって分かっていた。

もちろん、バックストップの確認や、矢先の安全性の確認は怠ってはいけないけど、事前に撃つ場面を想定して確認しておくことはできたはず。

結局、撃つことができなかったのは、よく言えば安全性に対して慎重だったから、悪く言えば覚悟が足りてなかったから……。慎重であることは誇るべきことだけど、実は覚悟ができていなかったことの方が大きかったかな、と思っている……。

単独猟は最高に楽しい

結局この日、あと2回鹿に遭遇した。しかし、そいつらはスコープに捉えることさえできなかった。

たぶん、最初のチャンスを逃した時点で、山の神様に「今日はこれだけよ」と見切りをつけられていたんだと思う。不思議なことにすごく自然にそう感じた。

たった1回の経験で単独忍び猟を語ることはできないけれど、とにかく少ないチャンスを活かすことが大事らしいことは痛いほど分かった。今日の猟から学んだことは多い。道具の持ち方、ベストの使い方、銃の持ち歩き方、獲物の動きを予想して行動することなど……。

あのとき、鹿がいるかもしれないのだから、もっともっともっとゆっくり歩み寄るべきだったし、鹿が逃げるパターンを想定し、各パターンに対して心の準備をしておかないといけなかった。逃げていく様子を見ながら、慌てて準備をしても追いつかない。鹿は馬鹿じゃない。

猟を終えて、車に戻る前。余韻を楽しむべく、温かいカフェラテを作って飲んだ。

猟を終えて、車に戻る前。余韻を楽しむべく、温かいカフェラテを作って飲んだ。

とにかく初めての単独猟は超が何個もつくほどおもしろかった。たしかに巻狩に比べて獲れる獲物は少ない。出会う獲物の数も少ない。そして喜びを分かち合える仲間がいるわけでもない。だけど、すべての責任を自分に課して、すべて自分で判断して、自分のペースで取り組める単独猟はとっても魅力的なスタイルだと思った。

まだ1回目。まだまだ学ぶことは多そうだ。

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