書評『超明快 レベルラインテンカラ』学びのプロセスが見える本
テンカラの普及に関する第一人者と言えば石垣尚男先生でしょう。テンカラ釣りのベテランであることは当然としても、初心者、中級者に教えることのうまさにおいても右に出るものはいないでしょう。
そんな彼のテンカラ本。
読まないわけにはいきませんよね。
超明快 レベルラインテンカラ
この本は、これまでブログの中で何度も「テンカラ入門本ならこれ」と何気なく紹介してきた本ですが、記事としてちゃんとレビューを書いたことがありませんでした。改めてちゃんとご紹介したいと思います。
まず内容より先に知っておいて欲しいのは著者である石垣尚男さんのこと。彼は愛知工業大学の教授。動体視力研究の第一人者であり、ニンテンドーDSの「眼力トレーニング」の監修もやっています。
そんな彼の名前で検索するとこんなページが見つかります。
愛知工業大学・経営学部・経営学科 スポーツマネジメント専攻 石垣研究室
そう。大学の研究室のサイトです。開いてみてください。
いきなりテンカラの写真。そしてその少し下には
研究テーマのスポーツビジョンの紹介と、趣味のテンカラのホームページです。
研究室のサイトじゃないの!? と言いたくなるけど、ほら動体視力の研究をしているんでね、テンカラの素早いアワセもお手の物。決して無関係じゃ、ない、と思うのです。笑
そしてこのページのメインコンテンツはなんと……
テンカラ関連最新更新(2017.2.6)
石垣尚男先生のテンカラに関する情報がズラッと並んでいます。これがまたおもしろいので、お時間があるときに眺めてみることをオススメします。
で、「研究室っぽい情報は何かあるのかな〜」とページを見てみますが、ない。「研究テーマのスポーツビジョンの紹介」ってのはどこにあるんでしょうね。笑
テンカラ普及の第一人者
さらに彼の活動についてご紹介しますが、石垣尚男先生はテンカラ普及の第一人者。
日本国内でもいろんな釣具屋さんでテンカラの講習会をやり、その活動はとうとう海外にまで……。
アメリカでテンカラの普及を推進している Tenkara USA という会社があります。そこではテンカラに関する釣り具なんかを販売しているのですが、普及のための動画をYouTubeで配信しています(けっこうよくできているので、オススメですよ)。
で、Tenakra USAの代表ダニエルさんはたびたび日本にやってきて、石垣尚男先生に教えを乞うているのです。
たとえばこんな動画
石垣尚男先生から教わって毛針を作っています。石垣先生の通訳を買って出たい、という話は置いておくとして、彼の功績は計り知れないものがあります。
さて、本は?
ここまでひたすら石垣尚男先生についてご紹介してきました。
本当に彼はテンカラ釣りが大好きで、それを広めるために注力なさっています。
で、この本はといえば、期待通りのすばらしい本です。まず何が嬉しいって、「監修」じゃないこと。
大体有名な人が出す入門本って、よく見ると本人が書いたものではなく、「○○○○先生 監修」になっていますよね。前に将棋の羽生先生の本を読んだら、やはり監修でした。
監修というのは出版社が書いたものをその人がチェックして、まちがいないね、と太鼓判を押した、ということです。だから内容に不備はない、とは言えるかもしれませんが、当人の口調・哲学・滲み出る精神のようなものは現れてきません。
一方『超明快 レベルラインテンカラ』はちゃんと石垣尚男先生が書いているもの。だから行間から滲み出るものが石垣尚男先生らしい、優しさに溢れているのです。
上級者ぶって小難しいことを書くのではなく、「初心者はこう始めよう。慣れたらこうしてみよう」と丁寧に書いてある。
たとえば使う毛針について、こんなことを書いています。
初心者にとって毛バリが見えないのは不安である。そこで白いハックルで巻いた毛バリを使うのが良いだろう。(中略)毛バリが見えると次の利点がある。
・毛バリの着水を見逃さないその後の毛バリの追跡が楽にできる。
・毛バリが見える安心感が余裕を生み、過度な集中を必要としない楽な釣りができる。
しかし本人は黒茶の自称「バーコードステルス毛バリ」、つまり「見えにくい毛バリ」を愛用しています。その理由として、毛針が見えないことで、目に頼らない釣りができると書いています。目に頼る限りは魚には勝てない、と言うのです。
「初心者は見えやすい毛針を使って、まずはテンカラ釣りに慣れよう。でも、慣れてきたら目に頼るのをやめることでより高みにいけるよ」と伝えてくれているわけです。
テンカラ釣りを始めてみると、彼の言わんとすることがよーく分かります。わたしは言うまでもなく初心者。見える毛針を使うことでリラックスしているステージです。見えないと疑心暗鬼になって、釣れないのです。
何度も開く本
この本は1度通読して終わりというものではなく、釣りをしながら時折開いて確認したくなる本です。
自分のやり方で合ってるかな?
こういうときはどうするんだろう?
そんなときに今まで何度も開いてきて、そのたびに何か発見がありました。
これからテンカラを始める人はぜひ、手元に置いておくことをオススメします。
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