マタギの携帯食『カネ餅』の作り方や用途をまとめてみる

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『カネ餅』という食べ物をご存じですか?

マタギに関する本を読むと、何度となく登場するマタギの行動食・緊急食です。

せっかくだから作ってみたい。そう思って情報を探してみましたが、思ったよりも情報が見つからないものです。

いろいろ探してみたので、ここにまとめておきます。

カネ餅に関する情報がありましたら、まとめていきたいので、ぜひコメントをください。

まずはマンガから

レシピを知りたければ、まずネット。ということでネットで検索してみました。

出てくるのはマンガ『ゴールデンカムイ』の感想がほとんど。『ゴールデンカムイ』はアイヌ民族の登場するマンガで、私も読んでいますがおもしろいですよ。

その中でカネ餅が登場するのは第8巻のこのシーン

ゴールデンカムイ8巻より

ゴールデンカムイ8巻より

自分ら阿仁マタギの非常用携行食で 丸いのと楕円のを作り2個一組にして山に入ります 丸いのは太陽で楕円のは月を意味するらしいです

米粉に水を加えて味噌か塩を混ぜ よくこねて葉っぱに包んで 囲炉裏の灰の下で蒸し焼きにするものです
ちなみに戸沢マタギじゃカネ餅に味噌は厳禁だそうで……

参考になりますね。

書籍『秋田マタギ聞書』

カネ餅に関してとても参考になる情報が多いのは『秋田マタギ聞書』という武藤鉄城氏の資料です。この本は、秋田マタギに聞き込みをしたことをそのまままとめたもので、資料としての価値がとても高い1冊。

索引がちゃんとついているのもありがたい。というか、他の本にもつけて欲しい。

この中からカネ餅に関する有意義な記述を抜粋していきます。

鈴木政治郎さんのお話

まず上桧木内村戸沢の鈴木政治郎さんのお話です。昭和11年以降に採録したものとのこと。

山の神に備えたものは絶対に女は食べられない。但しカネ餅は、神に供えないものを女が食うと難産しないという。
『秋田マタギ聞書』p5

カネ餅にはただの「携行食」以上の意味が込められているようですね。

鈴木政治郎さんはカネ餅に関してさらに語っています。

その袋(山行で背負う「クラゲャ」或いは「ヂェン袋」)の中には、カネ餅という餅が入っている。粳と糯と半分ずつの粉に塩味をつけて、円と楕円の形のものを一斤で七つほど作る。形はマタギの秘巻にある日天法と月天法を意味する。エビス(秋田市付近でいうスマシ餅)に似た味だが、非常に腰が強く、僅か囓っても、大いに腹のツワミとなる。

『秋田マタギ聞書』p16

粳と糯というのは、うるち米と餅米のことですよね。

また日天法・月天法という部分はさきほどゴールデンカムイでも紹介されていた太陽と月の形を表す、という部分と一致します。ただし、7つ作るという部分が分からない。マタギは7という数字を不吉として避けることが多いのですが、ここではあえて7つ。なにか意味がありそうです。ゴールデンカムイの「2個一組にして」という記述とも異なるんですね。地域差でしょうか。

橋本定治さんのお話

次は前述の鈴木政治郎さんと同じく、上桧木内村戸沢の橋本定治さんのお話です。

カネ餅(シトギ餅とも) カネ餅を粉雪へ落としてみて、その埋まった深さだけ雪にぬかるものだから、その占で背負って出る荷の重さを加減する。

『秋田マタギ聞書』p31

こちらはカネ餅の利用方法の紹介です。

書いてあるまんまですが、きっと出発前にカネ餅をポトッと落としてみて、雪の状態を判断するんでしょう。趣深いです。

鈴木信一さん、アサノさん(母)

上桧木内村浦子内に住む鈴木信一さんのお話です。

背負っていくクラゲャ袋にはカネ餅を入れた。山へ行くとき、その餅が割れたり、また握り飯が割れたりすると、不吉として行かなかった。

『秋田マタギ聞書』p40

マタギの世界には、「あれが起きたら不吉」と言われることがいろいろありますが、カネ餅もその一つのようです。他にも巻き狩りで7人だと不吉などといわれていますね。だから7人で行かねばならないときも、「8人で行く」と口では言うとか。

田中三之助翁

田沢村玉川の田中三之助さんのお話です。

カネ餅 一升の米を七つにこしらえて、一日に二つずつ食う。但し腹が減らなければ食わない。それを入れる袋は、ミサゲ袋といった。

『秋田マタギ聞書』p54

これだけ見ると、カネ餅のことを説明しているというよりも、握り飯のことを説明しているように見えますね。どうなのでしょうか?

1日に2つというのはゴールデンカムイの話と重なります。

佐藤富松さん

大阿仁村根子の佐藤富松さんのお話です。

カネ餅は日天、月天の二つ入れるもので、これは食料の尽きた絶体絶命の場合に食う。

『秋田マタギ聞書』p134

これは完全にゴールデンカムイの記述と一致します。

というのも、ゴールデンカムイでカネ餅について語る人物も阿仁のマタギ。佐藤富松さんもやはり阿仁です。緊急用の食事であることを強調している点も同じです。

山達之由来(秘巻)

『秋田マタギ聞書』の中で、その山達之由来という秘巻の中身も掲載されています。それをよく見ると、カネ餅に関する記述があるのですが、わたしの不勉強で、後半部分はっきりとした意味が読み取れません。だれか教えて!

○二つ也

○是ヲカネ餅ト云

是者隠陽日月之両輪表ス也 山狩時先此餅十二将奉供其後狩人眷属等可食也

前半はなんとなくわかります。「2つあって、太陽と月を表していて、それをカネ餅という」みたいな意味でしょう。

そのあとがはっきり分からない。想像だと「狩りのとき、眷属(薬師仏の十二神将)に供えて、そのあと食べていいよ」という意味かと思うのですが、いかがでしょうか?

今のマタギの携行食

さて、本の話はここまでにして、もう1つ補足情報を。

“カネ餅” で検索すると、なぜか『バター餅』に関する情報がヒットします。そしてそのバター餅も「マタギの携行食」として紹介されている(雑記帳:北秋田名物「バター餅」 全国デビュー (毎日新聞))ので、わたしはバター餅 ≒ カネ餅かと思い込んでしまいましたが、どうも勘違いのようで、別物と考えた方が良さそうです。

Twitterでこんなことを呟きましたが、間違えて理解していたようです。

あくまで昔のマタギが食べていたのはカネ餅。毎日新聞の記述を信じれば、最近のマタギはバター餅を(も?)食べている、ということでしょう。

とにかくバター餅、おいしかったですよ。

カネ餅に関して情報を募集しています。なにか良い資料や情報がありましたら教えてください。よろしくお願いします。

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