撃針が折れると鉄砲は使えなくなるという当たり前の事実
どんなものにもウィークポイントみたいなものがあります。
ほらみんなが使っているスマホもバッテリーっていう地味な部品が壊れたら使い物にならないわけです。鉄砲にとって撃針がそれだな〜ってこと。
ある日の流し猟、大事な場面
わたしはまだ流し猟で獲物を獲っていません。3回目の出猟時の話です。
その日は獲物天国で、読みが当たり行く場所行く場所にシカがいました。接近に失敗して苦戦しつつも、気持ちとしてはすごく楽しめていました。
「くっそ、でもまだまだ!」
と熱くなってきていたわけです。
そしてある牧草地でシカを発見。2頭のメスジカです。
距離は500m。射程距離外。自分と獲物の間にはなにもない。ただ広がる牧草地……無限の距離に思えます。
隠れながら近付くこともできませんので、牧草地の際をジワジワと歩いて近寄ります。双眼鏡を使い、シカが草を食べている間に移動し、頭を上げたら、その場でしゃがんで隠れる。それを繰り返してジワジワ距離を詰めていきました。
そして距離計で測ると150m。
「いける……」
その場でお尻を付けて座ります。戦争撃ちの姿勢をとります。融通が利かない姿勢ですが、相手は動いていないので安定性重視です。ちなみに構えている間に草を食べていたシカも座ってしまいました。
要するに超チャンス。外さなければ獲れる(当たり前)。自分の射撃の経験を考えれば、当たる可能性が凄く高い。
「獲れる。回収は……大丈夫……人の目は……気にならない……バックストップは……ある」
考えながらも弾を装填します。伸ばしていた人差し指をジワジワと用心金に入れ、引き金に触れる。触れた引き金を撃鉄が落ちないギリギリの所まで引く。スコープの中でレティクルが獲物に当たるのを待つ。
「今だ」
カチ。
乾いた金属音。
「え?」
遅発の可能性も考え待機。10秒を数えて弾を抜く。2発目を装填。改めて同じプロセスを繰り返し、引き金を引く……。しかし同じ。
なんだ!?
弾を見ると雷管に撃針が当たった跡がない。
「もしかして」
と鉄砲のボルトを抜いて、撃針が出ている状態にします。しかし撃針が出てこない。
「これはあれだ。撃針が折れるというヤツだ」
その場で確信しました。「撃針が折れる」というのはよく聞く話です。頻繁に起こるわけじゃないですが、鉄砲が壊れるとしたら、だいたい撃針というイメージです。
やっぱり壊れていた
シカはその場で動きません。こちらは撃針の出てこないボルトを見ながら、「どうすりゃ良いんだ?」と悩みます。目の前に獲物入るのに、何もできない。
悔しいからその場からトボトボと車に戻ります。
振り向くとシカもトボトボと去っていきました。狩猟の舞台となった牧草地から、ぼくらはトボトボと去っていき、残ったのは風だけです。
さて、撃針が折れている。その場ですぐに銃砲店に電話しました。
「ターハントRSG12の撃針が折れてしまって」
「部品が手に入るか調べてみます」
小一時間後に帰ってきた電話で「代理店にはないので、知ってる銃砲店にいろいろ当たってみます」という返答。
「たかが撃針なのに、これが折れただけで鉄砲がただの鉄の棒に成り代わるんだな。そしてそんな部品1つが見つからないだけど、この鉄砲がゴミになろうとしてる……」
あわてていろいろ連絡し、話を聞いてみると撃針を作ってもらうことも可能らしいことがわかり、いまは1つ作ってもらっています。平行して、全国の銃砲店からも探してもらっていて、それが見つかったらそれも購入し、予備の撃針としたいと思っています。
予備を持つことを考えてもいい
はっきり言います。
サベージなど数が出回っている鉄砲ならばともかく、わたしのターハントのような数が出ていない鉄砲を使う場合、撃針が折れたら下手すりゃ数週間〜数ヶ月、使えなくなります。
わたしは非猟期の駆除で使いたいので困ると言えば困るのですが、猟期と違って不思議と「まぁ、それなら駆除は休もうか」と割り切れたので精神的に痛手は少ないですが、もしこれが猟期の——しかも忍び猟に最高な1月などに起きたら……。たぶん泣きます。
というわけで、予備を持つのは必須でした。
——というお話でした。
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