親戚に「動物を殺すのは残酷」と言われたこと

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親戚の集まりで、「狩猟をやる」という話をしたところ、「動物を殺すのは残酷——」と言われました。

一瞬モヤッとしましたが、よく考えると理解できる気がした、というお話です。

親戚の集まりにて

ある日のことです。

親戚が集まり、食事をする機会がありました。叔父伯母なども集まる楽しい食事会。

わたしたち親戚たちの中に狩猟をやっている人がすでに2人いて、少なくとも狩猟の話をすることはタブーではないグループです。

その場の流れで、わたしも狩猟を始めるということが話題に挙がりました。その会話自体は特に引っかかることもなく、「がんばってね〜」「獲れたら肉送ってね〜」という感じで終始和やかなムード

しかし、そのすぐあとのことです。伯母のひとりがこんなことを言いました。

いや〜、わたしに狩猟はムリだなァ。肉は好きだけど、殺すのはやっぱり残酷でしょ。お肉はスーパーで買うのがいいわ。鳥か魚くらいならともかく、大きな動物は……ねェ……

一瞬、モヤッとしました。

「いや、スーパーで買っている肉だって誰かが殺しているわけで、残酷だなんて言われたくない」

とか

「結局肉を食べているなら、同じことじゃないか。自分で食べる肉を自分で殺すことは残酷ではないと思う」

とか

「獣を殺すのは残酷で、魚はいいのか? 鳥ならいいのか? 踊り食いはどうなんだ?」

とか……。

しかし伯母の無邪気な表情を見ていると、決して自分とそういう議論をしたくて言っているわけでもないのは分かるし、ただただ率直な感想なんだろうなと思い、穏やかな気持ちで受け流すことに。

「向き不向きがありますよね〜」

なんて具合に……。

すべての人がすべての事実に目を向けることはできない

帰り道、伯母の発言を何度も思い返しました。

彼女は決してわたしを止めようとしているわけでもないし、蔑んでいるわけでもなかったと思います。小さな頃から良くしてもらっている伯母ですしね。

ただ率直に「わたしにはムリ」と思ったのでしょう。

狩猟をやる人は命と肉について考える機会が多いと思います。またそれを考えることが狩猟を始めるきっかけとなっている人も少なくありません。

考え方は人それぞれですが、少なくとも命・死・生・肉・食料といった言葉について無関心ではないでしょう。もっと言えば、現代では目を背けても生きていけるそういう言葉に向き合う覚悟(?)を持った人が多いとも言えるかもしれません。

「自分は命の問題に対して無関心じゃないぞ」

わたしもいつのまにかそういう自負をもっていたのかもしれません。しかしよく考えてみれば、わたしだって目を背けている事実は山ほどあります。

たとえば……うちから出した家庭ゴミは誰かが回収し、どこかに運ばれ、何らかの形で処理されます。

あなたもゴミ問題に向けるべきだ! 目を背けて収集所に出すだけでいいのか? ゴミ処理の最後まで自分でやるべきじゃないか?

と言われても「いやァ、それはちょっと……」とうな垂れてしまいます。

でも、世間には “ゴミ問題に意義を見出して、改善のために尽力する人” がいます。ゴミを減らしたり、より厳密に分別したり、処理場について勉強したり……。

そういう人が目の前にいたとき、きっとわたしは「いや〜、すごいね。わたしにはムリだけど……」と思うことでしょう。

世の中にはいろんな “目を背けたくなる問題” がたくさんあって、そのすべてに目を向けることはできないっていうことなんだろうな、とわたしは感じました。

目を向けたい事実に目を向ける

で、人はどこに目を向けるのかと言えば、 “目を向けたい事実に目を向けている” ということだと思います。

わたしは狩猟という行為が社会的に意義があることで、命の頂き方として間違っていないと信じていますが、結局は「おもしろそう! やってみたい」と思ったからやっています。好きだから始めようと思ったんです。

もしおもしろそうだと思わなかったなら、社会的に意義があると知っても、やろうとは思わなかったでしょう。

わたしの伯母も、狩猟には興味がないけれど、他のいろんなことには興味があるでしょう。興味がないことに対して、そっけない態度を取ってしまうことは誰にでも起こること。残酷という言葉選びはやめてほしいな、とは思うものの、それを非難したり、わざわざケンカする必要はないんだろうな、と思いました。


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。2022年からはアイヌ犬のイチを連れて一銃一狗に挑戦します。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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