書評『渓のおきな一代記』瀬畑雄三さんが源流へと移行していく姿

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テンカラの世界では有名な瀬畑雄三さん。彼がテンカラに出会い、源流に出会い、そして自然全体に見せられていく姿が描かれた、まさに一代記です。

彼の姿から学ぶことは多いはず。

釣り好き、沢好き、源流好きにオススメしたい1冊です。

『渓のおきな一代記』

瀬畑雄三さんを知らないとモグリ

テンカラ釣りの世界で有名な人は何人かいますが、この瀬畑雄三さんはその代表格でしょう。

本のタイトルにもある「渓のおきな」という言葉を、ご本人はこのように書かれています。

“渓のおきな” の称号をいただくことになった。身に余る光栄と、その称号を拝したのである。この称号をいただくことになったのは、せばたさんは歳にあわず山渓のことすべてを知り尽くしている、おどろきだ、という意味でのお三方からの賛辞のつもりと思っている」

ここでいうお三方というのは、「深瀬さん、吉川さん、若杉隆さん」とのこと。不勉強で存じ上げなかったので、この3名について調べてみました(間違えていないといいのですが……)

深瀬さん……深瀬信夫さん(サイト)。『東京マタギの渓流跋渉術』の著者。現在は沢登り教室を開いているみたいです。この教室はサイトの方に詳しく紹介されています。とてもおもしろそうなワイルドな教室です。

吉川さん……吉川栄一さん(サイト)。『沢登り』の著者。サイトの方にこれまで行った沢の記録が掲載されていますが、その数なんと314本。驚くべき数です。恐らくサイトに載せていない沢もあるでしょうから、その本当の数は相当なものでしょう。

若杉隆さん……出版社である「つり人社」から出版されている『渓流』の創刊から編集に携わっており、現在は北海道支社にいらっしゃるそうです。

とにかくこの業界のそうそうたる顔ぶれと言っていいでしょう。そしてこの3名から「山渓のことを知り尽くしている」と言われた瀬畑さんの凄さをうかがい知ることが出来ます。

「釣り」から「源流釣り」へ

わたしがこの本の中で感じた大きな転機は瀬畑さんが源流へと進む場面でした。

テンカラにどっぷりとハマり、塩原温泉を流れる箒(ほうき)川の源流の善知鳥(うとう)沢へ向かいます。これが初めてのキャンプ釣行。

この野営釣行がきっかけとなり、それまでそこそこ山登りと平行して経験してきた沢登りの知識をおり交ぜながら、渓谷の奥へと “釣り場” を移行させていった。

瀬畑さんがより源流へと向かうきっかけでした。

源流は、イワナ釣りとともに、わたしに新しい世界を開いてくれ、わたしもそれに応えて名だたる未知の渓谷から渓谷へと入渓を果たしていったのである。

テンカラに血道を上げたときと同様に、源流の釣りにとらわれ人のような嵌まりかたをしたのである。

とりわけ、それまで釣り一辺倒だったかたくなな心が、いくぶん和らいでゆくのを自身で感じ、かたわらに目をやる心情になっていった。予期せぬ心境の変わりようである。

言ってみれば、釣り場が変わっただけですが、このことが大きな心境の変化をもたらしました。釣りをする人なら分かると思いますが、釣りは「竿さえ出せればそれでいい」というものではありません。だれでも好きな釣り場があって、その場所で竿を出したいものです。

瀬畑さんが自分の釣り場を見つけた瞬間でした。

それも釣りだけでなく、自然全体への興味に移り変わった瞬間でもあります。

そして源流で見るブナに魅せられます。そんなある日、福島のブナ林伐採計画を知りました。それに反対活動をし、紆余曲折の末、この計画がすべて撤回されました。

このほかにも白神山地や三面など、自然破壊が進みそうな場面では反対活動に手を貸し、日本の自然を守ることに力を注いできた人でもあります。

釣りは釣りだけじゃない

この本を通して、釣りというのは魚を釣るだけじゃないということを痛感しました。

魚に興味を持ち、魚がいる環境に興味を持ち、そこで釣りをする人に興味を持つ。そういう自然全体への興味がなくては、すくなくとも源流の釣りはできないのでしょう。

渓のおきなと呼ばれる瀬畑雄三さんとまでいかなくても、彼の1%程度でも渓のことを知りたい、とわたしは思いました。

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