狩猟野営行は読書の時間

最終更新日

ここ数年、野営しながらの狩猟に繰り返し取り組んできた。

特に今年になってからは何度も何度も野営行に行った。その経験から、それなりに “狩猟+野営” の実状やノウハウ、また本当の価値がどこにあるのか、ということも少しずつ分かってきた。

今日は野営狩猟行の流れをザッと書いてみようと思う。

そもそも野営狩猟行を積極的に取り入れていこうと思ったのは、一昔前の狩猟者たちへの憧憬がもっとも大きい。西村武重や今野保といった100年前の鉄砲撃ちや、久保俊治氏のようなスタイルの狩猟に対する憧れがあった。その手法としての憧れは当然だが、精神性への憧れも大きい。

彼らは山に何日も籠もって獲物を探し、追い、濃密な時間を過ごしていた。

彼らの本を読む度に思った。

「とんでもないやつらだ!」

そこで自分も少しやってみよう、と思い立ったのが数年前のことだった。北海道某所に遠征し、そこで寝泊まりしながら山を歩いた。ヒグマの痕跡を追い、とうとう獲物を見ることも叶わなかったが、満足度は高かった。無駄だとは思わなかった。

今日は野営狩猟行の流れを書いてみたい。

昼を過ぎたら野営場所探し

北海道だと日暮れは早い。秋から初冬だと16時過ぎには日暮れとなる。

そこで14時までには寝床を決めようという方針で日々活動していた。14時になってから探すのは不安なので、12~13時くらいになると、何となく寝床を探し始める。

それなりに視界が開けていて、安全で、水があり、平らで、薪があり、タープを張りやすい場所が候補となるが、意外とすべてを満たす場所は見当たらない。

「いい感じの場所だけど、水から遠い」

「すべて完璧だけど、薪が見当たらない」

なんてことが起こる。下手すると「条件は揃っているけど、なんかイヤ」という一人メンヘラを発揮して、場所が決まらないこともある。それでもどうにか14時までには決める。早い時は13時くらいには決めちゃうこともある。

薪集め~タープ設営~脱力

場所を決めたらまずは薪集めである。

タープを張ったりするのは後でいい(雨ならタープが先になることもある)。

薪は多めに集める。夜中暗闇で薪を探す羽目になるのはまっぴらだし、翌朝分の薪が足りなくなるのも悲しい。切ったり揃えたりするのはあとでもいいが、とにかく一晩燃やせる薪を山にしておく。また翌朝使うための焚き付けや細い薪も分けておき、後ほどタープの下に隠しておく。

タープを張り、焚火場所を決め、寝るまでどんな姿勢で過ごすかを決める。これがとても重要である。

じつのところ、焚火を前にダラダラする時間がものすごく長くなる。16時に日が暮れるとなれば、寝るまで何時間も焚火の前で過ごすわけだが、できればイス代わりの丸太か岩があるといいし、寄りかかるものがあればなお良い。この座る姿勢がバシッと決まると、夜の幸福度が上がる。逆に焚火前のスペースが妙に傾いていたり、ジメジメして座りにくい地面だったりすると最悪である。ずっと不愉快になる。寝る場所の整置も重要だが、焚火前の休憩場所の整置も重要である。

薪が集まり、タープを張れば、ごろりと横になる。この時間が至福である。

焚火をつけるかどうかはいつも悩む。サッサとつけて、暖かいお茶でも飲みたいとも思う一方で、ひと休みしたら、ちょっと鉄砲を担いで周辺を歩いてみたいとも思う。

いつもそんな葛藤の末、火をつけず、冷たい水を飲んで立ち上がる。周辺の足跡でも探そうと鉄砲を担いでウロウロと歩き回る。

夕食と読書と湯沸かし

できれば日が暮れるあたりで夕食を済ませる。あまり真っ暗になってから食べるよりも、薄暮の中で食べる方が飯はうまい。

狩猟野営での夕食はもっぱら米と味噌汁だ。とくに味噌汁は乾燥野菜を入れてたっぷり作る。

稀にシカ肉を持ってくることもある。そういう時は幸福だ。味噌汁にシカ肉を入れてシカ汁にしたり、フライパンでステーキを焼いたりする。そんな日は笑いが止まらない。なにもない山の中で食べるメシは、比喩でもなく、笑いが込み上げるくらいの幸福をもたらす。

“涙とともにパンをかじった者でなければ、人生の本当の味はわからない”(ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ)という言葉があるが、わたしは米とともに笑いが込み上げる経験がなければ、食事の本当の喜びはわからない、とでも言っておきたい。

山では疲れているのもあり、ガツガツ食べて、サッサと食事が終わってしまう傾向があるが、なにしろ夜は長いので、わたしはゆっくりと食べる。たっぷり作った味噌汁と、ご飯を交互に味わいながら、「あーうまい」「ほんとうまいわ」と独り言を言いながら食べる。

それでも食べ終えてしまったら、鍋や食器を拭いて、片付け、大鍋いっぱいに水を入れて火に掛ける。昔ネパールでの三週間に及ぶトレッキングをしたとき、山村の人たちが絶対に日を無駄にせず、常にお湯を沸かしていたのが印象的だった。沸いたら魔法瓶にいれて保管。次に料理やお茶を淹れるときに使えば、すぐに沸くので、効率がいいのだろう。

わたしも焚火をしている間は常に湯を沸かし、夜な夜な飲み続ける。そして本を読む。

ぎりぎりまで荷物を減らしているが、しっかり持ってきているのがKindleである。

わたしが使っているKindle Paperwhiteは210g程度と、ちょうど文庫本と同じくらいの大きさである。事前に数冊ダウンロードしておけば、山行中の読書に困らない。山で読む本がなくなると、本当につらいのだ。

朝、朝食と昼食と撤収と

朝は夜明け前に起きる。

祈るような気持ちで焚火をチェックする。まだ熾火が残っていればラッキーだが、ないときはない。前夜のうちに用意しておいた焚き付けや小枝をバサッと置いて雑に火をつける。

まずは湯を沸かし、チャイを入れる。服部文祥さんが山でチャイを入れるのを真似して、わたしも同じようにしている。脱脂粉乳はタンパク質やカルシウムが豊富だし、粉砂糖で糖分も摂取でき、茶葉のカフェインで目も冴え、さながら山の栄養ドリンクのようである。

あとはたっぷりの米を炊き、半分は朝食、半分は昼食用の弁当とする。

いつまでもだらけていたい気持ちに鞭打って、少しずつ片付けを進める。しっかり日が昇って、タープなどが乾いてから撤収したいところだが、時間がもったいないので、濡れたまましまう。どうせ午後には開いて乾かすことになる。

荷物をすべてザックに入れて、最後に忘れ物チェックと原状復帰を済ませて、歩き始める。

この瞬間がわたしは好きだ。朝、山で目覚めて、その夜もまた山で寝る。そういう1日は、日帰りの山行では絶対に得られない深い精神的な体験に繋がる。旅の喜びを思い出す。

少しだけ山に近づくような気がするのです。


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武重謙@やまくじ

ひとり山でヒグマを追うハンター。 狩猟系作家。宿泊施設経営。狩猟ブログ『山のクジラを獲りたくて』。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』などに寄稿。 著書『山のクジラを獲りたくて』(山と渓谷社) http://amzn.to/2NYn9Sv

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