〈狩猟で予算をかけるならインナー 〉街着とは違う、インナーの役割りについて。

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狩猟で、最初に金をかけるべきポイントとしてインナーを挙げる人が多い。わたしもまったくをもって賛成である。その理由は決して「インナーを着れば暖かいよ」というものではなく、「下手すりゃ死ぬぞ」という切実な思いが込められている、ということを書いてみたい。

街着と山で、ウェアの思想は異なる

アウトドア経験が少ないと服の性能を防寒だけで考えてしまいがちだ。アウトドアにおけるウェアの分類法は複数あり、ざっくりわけるなら——

  1. インナー
  2. ミドルウェア
  3. アウター

くらいに分けられると思う。

街着では、どれも防寒を目的にしていることが多い。寒いからジャケット着るし、寒いからフリースを着るし、寒いからヒートテックなどのインナーを着る。しかし山では違う。たとえば山で使うアウターは暖かくないものが多い。なぜなら雨風や障害物(木の枝や岩)から身を守ることが目的だからだ。このアウターが過度に暖かいと、行動中に「暑いから脱ぎたい。でも脱いだら小雨で濡れてしまう」というジレンマに陥る。つまりアウターはさほど暖かくない方が望ましい。温度調整はミドルウェアの仕事である。

インナーの目的

さて本題のインナーだが、街着では確実に “防寒” を目的に着ているはずだ。その証拠にUNIQLOのヒートテックは発熱することを売りにしており、それをみんなありがたがっている。

しかしヒートテック素材のインナーを山で使うのは厳禁だ(その意味が良く分かっている人が、工夫して使うケースはある)。なぜだろうか?

暖かくはなるのだが、汗を吸い上げて乾燥させる能力が低く、発熱により、さらに発汗を促すという問題がある。あれは運動時ではなく、平常時のわずかな汗(水蒸気)を熱に変えるくらいのものであり、流れる汗を想定したような商品ではないのだと思っている。

たとえばわたしは雪山での狩猟をやる。気温は氷点下5度〜15度と、かなり寒くなる。それを聞くと、みんな「寒そうだね〜」と心配してくれるが、実際は違う。死ぬほど暑いのだ。

行動中、汗がダラダラ流れ、服はびっしょり。汗を拭いながら歩いている。防寒なんて不要だ。事実、行動中は薄着になることが多い。

ところが問題はその後にある。いくら忍び猟でも1日中行動しているわけではない。

——獲物を捕獲後、解体やら回収やらで立ち止まる。

——あるいは、有力なポイントを発見し、獲物を待ち伏せる。

——あるいはやや遠めの獲物を見つけて、ゆっくりゆっくりアプローチする。

厳冬期の恐ろしいところは、行動を辞めた途端に一気に冷えることにある。行動中は汗を流しながら歩いていたのに、立ち止まって2〜3分もすると汗が冷えて、身体の芯から冷え、震えてくる。

わたしはこの「行動をやめた途端に冷える」という事象を防ぐ為にインナーやベースレイヤーを着ている。

山で着るインナーは速乾性重視

ということで山で着るインナーはとにかく速乾性を重視する。ヒートテックのような発熱を売りにしているような商品を着てはならない。

厳冬期の寒い季節に、しっかり汗をかくアクティビティをやってみれば、この汗冷えの厳しさを体感するはず。寝ぼけてヒートテックを着て山に行ったことがあるが、インナーがびしゃびしゃになり、芯から震えが止まらなかった。

ベースレイヤーを買ってほしい

繰り返しになるが、山で着るインナーは防寒目的ではなく、汗を皮膚から吸い上げて、蒸発させることが重要視される。そこで、この目的を追求したのがベースレイヤー(インナーのさらに下に着るもの)である。

わたしも愛用しているドライナミックメッシュという商品がある。あのみだらな、あれである

ここまで読んだ人には明らかだろうが、網になっているので、汗はその上に着ているインナーに吸われ、その後はもう肌に直接触れることはなく、汗冷えを軽減してくれる。

寒くない季節だとしても、汗で濡れたインナーは不快だ。それもドライナミックのようなドライレイヤーを着ることでかなり改善されるので、わたしは山に行くとなれば概ね季節問わず着ている。

たしかに安くはない。上下1万円は超える。

ただその価値はある。

狩猟で金を掛けるならインナーに。それもできればベースレイヤーに、というのがわたしの考えである。


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武重謙@やまくじ

ひとり山でヒグマを追うハンター。 狩猟系作家。宿泊施設経営。狩猟ブログ『山のクジラを獲りたくて』。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』などに寄稿。 著書『山のクジラを獲りたくて』(山と渓谷社) http://amzn.to/2NYn9Sv

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