狩猟の喜びは分かち合って完成する

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わたしはいつも一人で狩猟に行く。狩猟を始めたときから単独忍び猟ばかりだったし、ごく稀にだれかと行ったことはあるが、せいぜい年に数回。

なにしろ気を使う性格なもんで、だれかと一緒に行くのを、どうしても億劫に感じてしまう。

「一緒に行く?」と声をかけたら、きっと相手に気を使わせちゃうかもしれないな。誘ったからには獲って欲しいし、体力的な面でも合わせなきゃいけないし、と気を使った結果、だれも誘えないというコミュ障っぷりだ。

昔から人を誘うのが苦手なのだ。

小学生の頃、釣り友達がいて、いつも一緒に釣りに出掛けた。何も気を使わず「明日釣り行こうぜ」と誘えたのって、あの頃が最後だったんじゃないかな。自分の社交的コミュニケーション能力のピークは小学生時代だったのは間違いない。寂しいな。

かといって誰かと一緒にいるのがイヤなわけじゃない。会えば話を聞くのも、するのも好きだし、とても楽しめる。イヤじゃない、と書いたけど、本音で言えば、むしろ好きだ。なのに誘うのは気を使うし、誘われたら誘われたで未来の予定を決めるのが嫌いなもんで、すぐに断ってしまう。先のことなんてわからないのだから、あんまりガチっと予定を組みたくないのよ。

そんなわけで、自分としては最高の社交の形は、一人でふらりと飲み屋に行き、カウンターに知人がいた、というのシチュエーションだろう。待ち合わせもせず、帰る時間もバラバラで、話をしてもしなくても良い。それくらいがちょうどいい。

そして、何日もほとんど誰にも会わないという状況もつらいと感じない。実際、ここ数日、家族以外、ほとんど誰にも会っていない。自分で経営する宿の受付も、スタッフに任せているので、めったに接客もしないし、スタッフと軽い会話をする程度だ。

狩猟の孤独

そんなわたしだけど、こと狩猟に関してはやっぱり分かち合いたいと思ってしまう。

狩猟は孤独な行為だと思っている。獲物と自分の間には、極めてシンプルな関係しかない。撃つか、撃たないか。撃つ判断を誰かに委ねることもできず、撃った結果を誰かに押しつけることもできず。撃ったからには、汗をかいて、運び出し、解体したりしなければならない。単独猟はひたすら孤独だ。

わたしの場合、家族が狩猟に協力的で、狩猟で得た肉も喜んで食べてくれる。それが大きなモチベーションになっていると思う。もちろん好きで獲っているんだけど、家族が喜ぶという事実は、狩猟を支える大きなモチベーションになっている。

獲物を獲った直後など、やっぱりこの喜びをシェアしたいと思う。獲ったぞー!と誰かと分かち合いたいと思う。単独猟じゃそれも叶わないから、せめて家族や仲間にLINEでも……と思うもののわたしが行くような場所は電波がないので、それも不可能だ。仕方なく、黙々と作業に取りかかる。

帰宅し、家族で食べるとき「このシカを獲るときさー」と語りたくなる。そうすることで、はじめて狩猟の喜びが完結するような気がする。

『荒野へ』という作品を思い出す。映画『Into the Wild』の原作である。その最後、主人公が荒野から出られなくなり、誰にも助けを求められない状況に陥って、ノートに残す言葉がある。

Happiness only real when shared

荒野へ

昔これを見たとき、それでもひとりの方が気楽でいいや、と思ったのを覚えている。映画や本は大好きだったし、まったく文句はない。きっとこの状況に陥れば、自分も同じことを思うんだろうとさえ思ったけれど、今その状況じゃない以上、同じ感覚にはなりきれないな、と思った。

狩猟を続けてきた今は思う。誰かと狩猟の喜びを分かち合えなかったら、きっと本当の狩猟の喜びを感じることはできないかもな、と。

社交的じゃないから、たくさんの仲間と肩を組んで喜びを語り合う……みたいなやつは縁遠いのだけど、こうしてブログを書いたり、SNSに投稿したり、ときどき仲間とLINEでやりとりしたり、家族で狩猟のことを語り合うのは、こういうことなんだろう、と

山に行くのは一人でいい。

だけど、狩猟仲間を持つことはとても大事だと思う。そういう人間関係を面倒くさがって、すべてを避けていく人もいる(わりとわたしもそう)。だけど、自分の心が許す範囲で、仲間を持つことは良いことだと思う。

単独猟を志す人が増えていると聞く。

猟は単独でもいいけど、それを分かち合う仲間はちゃんと作るんだよ。


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武重謙@やまくじ

ひとり山でヒグマを追うハンター。 狩猟系作家。宿泊施設経営。狩猟ブログ『山のクジラを獲りたくて』。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』などに寄稿。 著書『山のクジラを獲りたくて』(山と渓谷社) http://amzn.to/2NYn9Sv

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