円山動物園のヒグマ展示の協力と、手洗い的な大切さ
札幌の円山動物園にて『すぐそこにいる野生~北海道のヒグマ・札幌のヒグマ~』という特別企画展があります。自然文化団体ノノオトさんの主催によるもので、素朴ながら実直な展示になっています。
じつは私も微力ながらお手伝いさせていただいており、展示パネルの一角が、わたしの活動の紹介となっています。ノノオトさんからお声がけをいただき、インタビューから、紹介文などのパネルをご用意いただきました。

せっかくなので、わたしも現地を見にいき、展示を拝見させていただき、改めて「当たり前のことをちゃんと発信することって重要だよな」と感じました。
——というのものね。このツイートのことを思い出すからなんです。
連日繰り返されるクマの事故に対して、「駆除するなんてかわいそうだろ!」やら「ガンガン減らせ!」とか「クマスプレーなんて風下にいたら使えないんだから意味ないだろ?」みたいな、ちょっと極端な意見がSNSを賑わしていたことにくたびれていたところに、日本クマネットワークさんが提言を公開してくれたもんで、嬉しくなってシェアした投稿です。
社会情勢の切迫感からか、1500超のリポスト、3000超のいいね、とそれなりに伸びました。ほとんどは「いいね〜」という感じのポジティブな反応でしたが、なかには「当たり前のことしか書いてなくてガッカリ」という意見もありました。

気持ちは分かるんです。専門家たちが集まって、研究して、「提言だ!」となって、世界を変えるような意見が出てくるのを期待したのかもしれません。ところが出てくるのは普通のことばかり。提言の骨子とも言える最初の話は以下の通り。
1.クマ類と人間のゾーニング(棲み分け)の実現と維持
クマ類による被害への防止対策に関する提言
・人間活動域周辺に生息するクマ類の捕獲による生息密度の低下
・誘因物管理、緩衝地帯での環境整備の支援、整備手法に関する情報の共有
・クマ類と人間との緊張関係の再構築
ッてな具合です。クマの数を減らし、誘因物を減らし、緩衝地帯を整備し、適度な緊張関係を再構築しよう、という話です。当たり前すぎる話。たしかに夢がないようにも見えます。
でもね。大変なクリシェで申し訳ないけど、こういう対策に銀の弾丸はないのですよ。地味な対策を打ち続けるしかありません。そして、当たり前のことを提言して、怒られる感じを見るとゼンメルワイスの逸話を思い出します。
1840年頃、出産後に亡くなるお母さんが多かったようです。それも医師や医学生がとりあげたときだけ死亡率が高く、助産師さんが対応すると問題ない……。ゼンメルワイスの研究の結果、医師や医学生は午前中に解剖実習を行い、午後にお産に立ち会っていたことがわかりました。当時は医療行為の前後での手洗いは義務づけられていなかったため、解剖実習で手についた病原菌をお母さんにうつしていた——と。
ゼンメルワイスが手洗いの重要性を発表しても、医学会は手洗いの必要性を受け入れなかった。時は経ち、1870年代になり、ようやく手洗いの必要性が受け入れられて、この問題に終止符が打たれた、というわけです。
参考:手洗い唱えた医師、不遇の生涯 100年後の名誉回復|日本経済新聞
今見れば当たり前すぎる「手を洗う」という対策でさえ、当時は広まっていませんでした。その説明をしても、理解されなかった。
今回のようなクマ対策の提言は、このゼンメルワイスの逸話とは微妙に違うのはわかっています。当時は手洗いの必要性が理解されていませんでした。それに比べてゾーニングなどが必要なことはだれもがわかっていることでしょう。しかし分かっているがやれていない。本当の意味で重要性が伝わっていないとすれば、ゼンメルワイスの話と少し重なってきます。
クマ対策は、言ってみれば当たり前のことを「ちゃんとやる」ということなんでしょう。
日本クマネットワークによるPDF1ページちょっと、という短く平易な文章でまとめられた提言は、その当たり前のことさえやれてないぞ、という強いメッセージなのだと受け止めています。
円山動物園の展示も、そういう思いを乗せた企画です。
手を洗うことで救える命がある、というわけです。
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