インタビューを受けて思うこと
こうやって発信活動をしているからか、たまにインタビューを受けることがあります。
そうやってインタビューを受けると、まぁ似たり寄ったりな質問をうけるもので、あんまり頻繁に受けていたら嫌になりそうな気もしますが、私の場合、そこまで頻度が高いわけでもなく、むしろ「よくある質問について、改めて考えるよい機会」って感じで楽しんでいます。
そもそも、考えることが好きです。
考えなくても生きていけるし、考えなくても狩猟はできるし、考えなくてもアウトドアで遊べます。
だけど考えながらの方がおもしろい。わたしはそう思っているンです。
そういう話です。
考えることを嘲笑したくない
狩猟を始めた人が、最初の獲物を獲ると決まって言うことがあります。
「命のありがたみを感じました」
この言葉を嘘だとは言いませんが、言葉の裏にはもっといろんな感情がうごめいているはずです。たとえば——
「獲物が獲れてめちゃくちゃ嬉しいけど、それを最初に言うと『生き物を殺して喜ぶな』と怒られそうだよな。まずは『ありがたみ』から語っておこう。そんなことよりこれから解体と回収どうしよう。うわーマダニうごめいてる……。え、シカが動いた? 死んでないの? 止め刺ししなくちゃ……困ったなぁ。でも全部終われば、シカ肉とビールで晩酌だ! それにしても、はやく殺してあげないと——」
なんて感じで、喜び・興奮・困惑・不安が入り交じるのが普通だと思います。
そして帰りしな、重い獲物を背負って思うんです。
生きるとはなにか? なぜ自分が食べる側で、このシカが食べられる側なのか? 自分で殺したけど、ちょっとかわいそうとも思っちゃったな……。矛盾だよなぁ。どういう感情を持つのが正解なのだろう? うーん。
そんな風に初めての獲物を背負いいろんな感情が動き、動物の生死について思いを馳せる。そういう時間を大切にしてほしいと思うんです。
そういうツイートをしている人を揶揄して「ポエムおつ」みたいに言う人もいます。
たしかに、1年に何百頭も獲っている人が、1頭殺す度に思い悩んでいては仕事が進みません。淡々と、きれいにことを運ぶことに集中する方が、合理的です。それを否定する気はまったくありません。
でもわたしは狩猟を通じて、あるいはアウトドア活動を通じて、自分の心と向き合い、いろんなことを考える姿勢が好きです。
わたしもいろんなことを思い悩んだりします。
なにが狩猟の魅力なの? なぜ狩猟をやるの?
よく訊かれることの上位10の質問を作ったら、きっとこれが入ります。
狩猟の魅力とはなにか?
私の場合、社会のためとか、生態系のためにという意識はあまりありません。結果的にそういう良い結果に結びつけばいいなとは思うし、少なくともそういう思いで活動している人たちを邪魔しないように、という気持ちはあります。
だけど、わたしの狩猟はわたしのものです。わたしはわたしのために獲っています。
さて、なんのために狩猟をやるのでしょうか?
食べるため。もちろんそうです。嘘偽りない感情です。でも、先述の「初めての獲物」での複雑な感情のように、ここでも実は他の感情が入り乱れるんです。
たとえばわたしはヒグマを獲りたいと思っています。まだ獲れていませんが、獲るために努力はしています。
なぜヒグマを獲るか? そこに少なからず「獲る難しさ」が影響していると思っています。獲るのが難しいからこそ獲りたい。そういう感情です。本当に腹を膨らませるために獲るならばエゾシカを獲ればいいんです。獲りやすいですからね。
もちろん、ヒグマにしかない大義名分がないわけではありません。あのヒグマが蓄えた脂肪は、山では貴重な脂分です。クマの脂は軟膏としても使われるほどで、大変魅力的素材です。わたしも獲った暁には、そういう活用もするつもりです。
でも、やっぱり心の中に「難しいからこそ獲りたい」という感情もあります。食べるため、という単純明快な感情だけではないのです。
またエゾシカを獲るにしてもそうです。
腹を膨らませるために獲るなら、簡単に獲る方法もあるでしょう。でも、単独忍び猟というスタイルにこだわり、獲ること以上に、獲り方に重点を置いていることを否めません。
やはりそこに獲る喜び、難しさがあってこその挑戦心、あるいは過去の猟師たちへの憧れ……、そういう感情が入り乱れています。
インタビューでは、そういう複雑な感情を垂れ流すようにお伝えするのですが、なかなか全部が言語化されることは多くありません。
やっぱり自分でこうやって書く場所を持って、自分で書かないといけないと思うのです。
インタビューから学ぶことは多いです。これからもいろいろ学ばせてもらえるのだと思います。
そういう依頼がありましたら、XやインスタのDMまで。
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