【初めての一銃一狗】ストレスもなければ、獲物もない、平和な1日【アイヌ犬】
アイヌ犬のイチを連れて、初めて狩猟に出てきましたので、その模様を。
朝、出発
日の出前。イチは小屋の中で爆睡。突然やってきたぼくを見て飛び起きて尻尾を振っていました。
リードに繋ぎ、散歩だと思っているイチくんは「公園行こうぜ、父ちゃん」というテンションです。ところが車の横に連れて行かれて、「お!? 車に乗るの? いいね〜」とイチは嬉しそう。というのも、イチが車に乗ることを嫌いにならないように、日頃から、車=楽しい場所に行くという習慣をつけていたので、どちらかといえば車が好きなんです。
車内のクレートに入れてやると、ちょっと弱気にクーンクーンと鼻を鳴らします。車は嫌じゃないけど、車内のクレートはまだ完全に慣れていなくて、ちょっとだけ不安なんでしょうね。しかも、いつもより移動が長いもんですから、不安になったのかもしれません。
ともあれ、猟場についてクレートから出して、リードに繋いでやると嬉しそうにクンクン嗅ぎ回っていました。
犬に急かされる

ぼくはザックに入れるものを猟場で決めることも多くて、車を停めてから「これはいらない。これは入れておこう」と調整します。1日中同じ場所を歩くときもあれば、2〜3ヶ所をそれぞれ回ることもあります。そうなったときは「ここは2時間もあれば戻れるから食料だとか、“念のため” という道具は最小限でいいな」となるし、逆に長く歩く山では、いろいろ多めに持っていくわけです。場所によってはほぼ手ぶらっていうこともあります。
この日も車を停めてから、ザックに入れたり出したりやっていたんですが、イチは「早く行こうよー早く行こうよー」という暗黙のプレッシャーをかけてきます。
「あー、もう、わかったわかった」
と慌てて用意して出発。なんとなくせわしない出発です。
ドッグナビはまったく気にならず

じつはちゃんとドッグナビをつけて行動するのはこの日が初めて。
試しにつけてみるくらいのことはしてみたけど、散歩中につけると目立ちそうだから試してなかったんですよね(まぁ、後回しにしているうちに試す機会を逸しただけなんですが)。
恐る恐るつけてやると……まったく気にせず装着させてくれて、その後も掻いたりすることもなく、何事もなかったように受け入れてくれていました。よかった。
車から離れて開放!
ついたらすぐ開放というクセをつけたくなかったので、リードをつけてしばらく歩き、適当なタイミングで開放してやりました。
イチは開放しても過度に離れることなく、ぼくを中心に30〜50m以内を嗅ぎ回りながら行動します。歩き過ぎてぼくが見えない場所まで行ってしまうと、戻ってきてぼくを待ちます。そういう意味で、まったく不安はありませんでしたね。
ときどき何かの匂いを拾ったのか、ヒューッと早足で進んでいくこともありますが、せいぜい100mほど。大して遠くまで行きません。
本当に安心な感じです。狩猟的にどうなのか分かりませんが、ガンガン離れていって、見えないところでがんばられても手に負えないこともあるでしょうし、ある程度の距離で活動してくれる方がぼくは安心です。
シカを目視できないイチ
行動中、何度もシカを見つけました……ぼくが。
100〜150m先にいて、餌を食べてるような無防備なシカです。単独なら撃って獲って終わりなんですが、イチに見つけさせてやりたい気持ちもあって、あえて撃たずに観察しますが、いつまでもイチは見つけてくれません。
あるときは、ぼくが見つけたシカに、イチは気付かないまま偶然フラフラと近付いて行きます。シカも物陰に入り、シカもイチもお互いに気が付いていない状態。
「どうなる?」
と緊張してみていると、イチとシカが小さな藪を挟んで立っているという状態になり、そこでイチが絵に描いたように「ハッ」とします。シカもその瞬間に飛び上がり、深い藪へと飛び込んでいきました。イチはシカの腹の辺りに体当たりするようにぶつかっていきましたが、たぶん掠ったくらいでしょうね。
藪に飛び込んだシカをイチは追いかけましたが、ほとんど為す術なく逃げられて、終わり。すぐに諦めて帰ってきました。
諦めるの早くない!?笑
何度か追いかけて、すぐ諦めて
その後も何度かシカを見つけて追いかけて、すぐに諦めるということを繰り返していました。
本当に諦めが早い。笑えるほど早い。どうなるかと言うと——
イチはぼくの30m先を歩き、その50m先にいるシカを目視すると、ワーーーーっと駆けていって、シカを逃げ散らかして、誇り高い顔で帰ってくる——
そんな感じです。まるで「邪魔なシカを追い払ったよ」とでも言わんばかりの顔付きです。まぁ、いいけどさ〜。シカを獲りたいなら、イチより先に見つけて、先に撃つしかなさそうです。
クマ糞発見
そう、ぼくの本命はヒグマです。
イチに狩猟の楽しさを伝えつつ、ヒグマの動向を調べるというのが、当面の目標です。だからイチの様子を見ながら、ヒグマの痕跡も探していました。その中で糞を2つ発見。イチを呼び戻して匂いをしっかり嗅がせます。
すると!
イチはどことなく不安そうに。それまではぼくの30m先を歩いていたのに、なんか数メートル先を歩くようになり、ときにはぼくの後ろを歩くように……。
「おい! 怖いとしても、匂いでヒグマが近いかどうかわかるんじゃないのか? それとも近くにいるから怖いのか?」
もしかしたら、ずいぶん疲れていたようなので、ただ単純に疲れてトボトボ歩いていただけなのかもしれません。でも、心なしか不安そうには見えました。
クマ犬としてどうか?
という意見はあるかもしれませんが、個人的には悪い反応ではないんじゃないかな、と思っています。それまで無邪気に山を駆け回って、怖い物なしって雰囲気でしたが、これで「山にはなんか怖いものもいるから慎重に行動しないと」と思ってくれれば言うことありませんし、ヒグマ相手に果敢に飛びかかる犬より、「怖いから距離を置いて——」と安全を重視してくれる方が、ぼくの理想です。
びびって逃げるんじゃ困るけど。
まぁ、まだ生後8ヶ月の子どもだから、ぼくの後ろを歩いて、大人としてぼくが守ってやるくらいの気持ちで歩いていました。
歩き過ぎた

この日、ぼくの行動距離で10Km弱は歩きました。のんびりゆっくりだし、あまり高低差のないなだらかなルートでしたけどね。
イチにはずいぶん堪えたようで、帰りの車に乗ると、すぐに丸まってスヤスヤ。
行きの車ではクンクンと鼻を鳴らしていましたが、帰りは家に着くまでずっと休んでましたね。ちょっと歩き過ぎたかもしれません。
ともかく、ぼくとしては満足の1日でした。獲物が獲れるかどうかは問題ではなく、ストレスなく1日の猟を終えることができたってことが大事です。たとえばリードを放した瞬間にすっ飛んでって帰ってこないとか。足下から離れずまったく冒険しないとか。ワンワン無駄吠えを続けるとか。そういう「それじゃ猟にならん!」と嘆くようなことが1つもなかったことが大満足です。
ぼくからもっとも離れた瞬間で直線距離で250mくらい。それ以外は100m以内くらいで行動していました。一般的にはどうなんでしょうね? やりたい猟風によっても考え方が変わるところかもしれません。
まだ1日目ですから、あまり気負わず楽しんでいきます。次回はもっと長い休憩時間を設けて、スローペースでやろうっと。ちょっと初日ってこともあって、歩かせ過ぎました。
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