「狩猟はおもしろい」と言える自分でありたい

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テレビの狩猟番組などを見ると、必ずと言って良いほど「狩猟の大義名分」が語られるように思います。

「害獣としてすごい金額の被害が——」
「山の下草がなくなり、土砂の流出が——」
「命の大切さが——」

という類いのヤツです。これはこれで事実だし、問題だし、その問題に対して立ち向かう人も立派だと思うのですが、本当は違うのに、体裁を整えるためにそういうポーズをとらなきゃいけないのは、ちょっと嫌だな、とぼくは思っています。

「なんで狩猟をやっているの?」
「おもしろいからだよ」

そう言えるようでありたいな、と。

そもそもなんで言えないの?

取材などで「どうして狩猟を?」と訊かれると、反射的に「狩猟の正当性」を訴えたくなります。

「狩猟は必要なことなんだよ!」って。

裏を返せば「正当性がなければ、非難されるのではないか?」という恐れもあるのかもしれません。少なくともぼくはありますよ。小心者ですから。

「増えすぎたシカの数は問題です。狩猟を通じて自然や生態系に貢献できたなら幸いです」

と答えれば、そりゃもう聞こえはいいですからね。

やっぱり、狩猟ってちょっと後ろめたいのだと思うんです。いくら「釣りと一緒だよ」と語ったところで、やっていない人たちの肌感覚として本当に釣りと同じだとは思ってはもらえないですからね。

「狩猟なんてものをやるのであれば、そこに社会的意義があるはずだ」

という期待があるのだと思います。その証拠に、たまに取材を受けますが、露骨にそういう大義名分を求められることもあります。

「やっぱり狩猟には意義があると思って取り組んでいるんですか?」

なんて具合に。

 

そもそも狩猟の目的って人それぞれなんです

狩猟の目的
狩猟の目的は多種多様

実際に狩猟をやっている人たちと交流することも多いですが、みんなやっている理由は異なります。

ザックリ言えば「駆除」「食肉ビジネス」「レジャー」などに分けられると思いますが、その中でも細分化されるでしょう(上の図を参照)。

「駆除」と言っても、自分の(あるいは身近な人の)山や畑を守るためにやっている人もいれば、駆除でもらえる報奨金を目的にしている人もいます。

こういう図にすると「駆除や食肉ビジネスに大義名分があり、レジャーなんてけしからん」と思われそうで怖いのですが、ぼくはあえてレジャーの配下に「自家消費のため」という動機を置きました。

ぼくの感覚では家庭菜園と似ていると思っています。

家庭菜園だって、食べるためだけにやっているわけじゃなくて、育てる過程を楽しんでいるケースが多いと思います。お金を出して買うのとは違う、その感覚が生活に彩りを与えるのだろうと思うのです。狩猟も同じで、生活に彩りを与えてくれるんです。でも、それは「やらねばならない」という社会的大義名分がないから、どうしても「レジャー」だとか「趣味」といった区分けになりがちです。

「なんで狩猟をやってるの?」
「趣味です」

って言いにくいんですよね。でも、絶対おかしいことではないはず。

 

実際には動機も組み合わせ

で、便宜上、先述の通り「狩猟をやる目的」っていろいろありますよ、って話を書きましたが、実際は複数の動機の組み合わせだと思うんです。

つまり——

「駆除のためにやってるよ。そしておもしろいんだよね」
「狩猟っておもしろいんですよ。しかも駆除を通じて社会貢献になるし」

あるいは

「山を歩く冒険感とそれを食べる喜びがたまらないよ」

という感じで、極めて個人的な感覚でやっている人も多いと思います。ぼくはこのパターンでしょう。

 

ちゃんと「おもしろさ」を伝えたい

「狩猟がおもしろい」って言葉はけっこうな危うさを孕んでいるんです。

狩猟に対して否定的な感覚の人からすれば「動物を殺すのがおもしろいだなんて野蛮」という捉え方をするかもしれません。

それは(ぼくに関して言えば)不本意です。だから例えばなにかの取材で「狩猟はおもしろい」と語るからには、その中身までを語らせてくれーと思うんです。

「なぜ狩猟を?」
「おもしろいからです」
「へぇ〜。おもしろいんですね」

で終わられると不安なんです。どこがどうおもしろいのか? 動物を読み、山を読むといった部分から、家族と囲む食卓に至るまで、いろんなおもしろさがあります。自分の本の中で、撃つ瞬間、殺める瞬間のことを「句点のようなもの」であると書きました。文章は句点を書くために書くわけじゃないが、かといって句点を打たなければ、文は終わることができない。そういう意味です。

狩猟をやる以上「殺し」から逃げることはできないが、かといって「殺すために」やっているわけじゃない。

殺しも含めた長いプロセスの中に、おもしろさがあるんです。

 

ぼくはそのおもしろさを伝えたいと思っています。ぼくは「ハンターを増やそう!」という立場ではありませんが、もし増やそうとするならそのおもしろさを伝えることこそが重要だと思うんです。

 

狩猟はおもしろいですよ。


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。2022年からはアイヌ犬のイチを連れて一銃一狗に挑戦します。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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