狩猟が好きな理由

なぜ狩猟をやるのか？

という問いは狩猟をやっていると良く聞かれる質問の1つだ。正直に言って、わりと飽きている質問の1つである。

今日はその答えを書いてみよう。

「好き」だから

ひと言で答えるなら「好きだから」としか言いようがない。

狩猟を始めた頃、この問いに対して「好きだし、ほら獣害の被害も多いし、獲れば駆除に繋がるし……」とモゴモゴと答えたことがあるが、あとになって少し嫌な気持ちになった。自分の感情が薄まって伝わった感触があったからだ。

獣害があろうがなかろうが、ぼくは獲る。好きだから獲る。獣害も有害鳥獣駆除も関係ない。少しは駆除にも参加しているけど、それはあくまで「狩猟」「鉄砲」という一応は特技を持っている上での社会貢献としてやっているに過ぎない。

「今年から駆除はなくなります。報奨金もなし」

となっても、まったく変わらず狩猟を続ける。

獣害に興味がないわけではない。ゴミ問題。エネルギー問題。ご近所トラブル。税金対策。老後の心配などと同じように興味はある。狩猟をやっている中で、鳥獣害被害は目の当たりにすることが多いので、いくぶん強い興味を持ち、「他人事じゃないな」という実感は持っているが、それは狩猟をやる理由じゃない。狩猟をやっていることで興味を持つようになった、というのが正しい。

動物が憎くて撃ったこともない。

 

なにが「好き」か？

獲物を獲ることも好きだし、それを食べる事も好きだ。ただ、山の中で過ごす時間が好きなので、山で獲らないなら意味がない、とは思っている。

自分の「狩猟が好き」の感覚を分解すると、これら2つになりそうだ。

• 冒険心
• 狩猟が作る生活感

前者はそのまま、狩猟に感じる冒険感が好きなんだと思う。ぼくは冒険家ではないけれど、たぶん人より少し冒険に興味がある。人生でやりたいことリストを作ったなら、リストのどこかに「冒険家になる」が入ってくると思う。

後者はそんなにシンプルな感覚ではないので、伝えるのが少し難しい。

 

狩猟の冒険味

30歳で旅に出て2年4ヶ月かけて世界を放浪したが、あれなんてまさに冒険心を満たす行為だった。

狩猟を始めて、そんな冒険の味を感じるようになった。とくに去年からヒグマを探す様になり、その冒険味はずいぶん増した。「ヒグマが怖いから冒険だ」ということではなくて、ヒグマを探すために自分のコンフォートゾーンを出なくてはいけなかったというのが、その理由だろうと思う。

シカを獲る上では、自分の安全や快適さを保ちながら行動できる。無理する必要がない。無理せず安全な場所を中心に、慎重に行動していれば獲物は獲れる。ところがヒグマを探すとなるとそうはいかない。

フラフラと山を歩いていれば見つかるものではない。だからより広範囲を探し、足跡を見つけたら歩きにくい場所でも追わなくてはならない。そこには当然ヒグマがいるわけで、安全圏とは言いがたい。

自分のコンフォートゾーンを出る必要がある。それが冒険味を増すのだと思う。

——というわけで、自分が流し猟にあまり興味がないのも、この “冒険味” で説明できる気がする。

 

狩猟のある生活

狩猟の魅力は狩猟をやっている瞬間だけにあるわけではない。

分かりやすい例を挙げるなら、狩猟で得た肉を調理するのも、それを家族で食べるのも楽しみだ、という話である。でも “それだけではないし、その先にさらなるおもしろさがある” 、と思うようになっている。

たとえば獲った肉を友達にあげる。あるいは自宅に呼び、みんなで食べる。うちで住み込んでくれているバイトの子たちに振る舞う。

みんながおもしろがってくれる。おもしろがってくれるのを見れば、当然、こちらもおもしろい。

もともと人見知りで、ともすれば他人とあんまり交流しない自分にとって、”狩猟” を媒介にして、だれかと繋がる。

狩猟をやっている人なら「肉を上げたら、別のもの——たとえば農家の野菜——になって返ってきた」なんて経験があると思う。地方に住んでいると、そういうギブ＆テイクは当たり前。みんなそれぞれの特技を活かして、ギブ＆テイクをしている。決して堅苦しい「等価交換」ではなく、あげられるときにあげるという、ゆるく一方的な物々交換だ。

自分の狩猟という行為が、こういう地域コミュニティに入るためのちょっとしたきっかけになっていると思う。

 

狩猟はおもしろい

ぼくは「狩猟はおもしろい」とハッキリ言いたい。

食うために仕方なく——駆除のために仕方なく——とは思っていない。もちろん獲るからには食うし、獲物に対する尊敬の念はあるし、道から外れるような狩猟はしない。でも、狩猟はおもしろい。それは間違いない。

おもしろいからこそ、研究し、努力し、反省し、自己研鑽を繰り返す。少なくとも自分はそう。

狩猟はおもしろいよ。

 

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