単独忍び猟を始める前に知っておいた方がいい5つの大変さ

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ぼくは単独忍び猟という猟風が好きです。上手い下手は抜きにして、自分には合っていると思います。

あまりに好きなもので「単独忍び猟はおもしろいよ」という話を書きたくなるのですが、最近は「単独でやってみたけど、思ったより大変なんですね」みたいなコメントをもらうことも増えており、その大変さみたいな部分をまとめてみてもいいかな、と思いました。

大変さは魅力と裏返しですし、はっきり言えば「その大変さ」も楽しめる器量が必要かな、と思います。

だからぼくはここで挙げるようなことを、本心から「大変だ」とか「短所だ」とは思っていません。当たり前の苦労だと思っています。たとえば登山をすれば足が疲れますが、「足が疲れるのが登山の短所だ」とは思わないですよね。そういうことです

1.獲物が獲れない

ぼくが猟を始めた年、初めての獲物を獲るまでに8日かかりました。そのときの記事がありますのでご紹介しておきます。

参考:単独猟日記8:初めて獲ったシカのこと。自分で決めて自分で撃つこと。

8回出猟して、初めての獲物です。さてこれから猟を始める人は冷静に考えて欲しいのですが、猟期の間に何回出猟できるか考えたことがありますか?

北海道以外の地域だと、猟期は約3ヶ月。つまり約12週。たとえば会社員で、家族もいれば、すべての休みを猟に費やすことは難しいでしょう。仮に週に1度出猟したとしてもたったの12回。たまに雨や家族の都合などで行けない週もあるでしょう。そうしたら7〜10回くらいしか出猟できないかもしれません。

はっきり言います。

初年度に獲物に恵まれない可能性は大いにあります。実際にそういう話はたくさん聞きます。巻狩でも「初年度は1度も発砲できなかった」という話は聞きますが、さすがにグループの誰かが撃ってくれるので、肉自体は手に入ると思います。しかし単独だと自分で獲れなければ肉はゼロ。

もし単独忍び猟だけにこだわると、あなたが苦労して手にしたその鉄砲を1度も撃つことなく終わる可能性があるということは知っておいていいと思います。

 

2.肉の持ち帰りが大変

さて、猟を始める前は獲物を獲ることばかり考えますが、本当に大変なのは獲物を獲ったあとです。

というのも獲った獲物を持ち帰らなければなりません。獲物の処理については地域によってルールが違ったりするので、ご自身の地域に関して自分で調べてみた方がいいです。

ぼくの知っている範囲だと「現地で解体。残滓は埋設処理。食べるお肉は背負って帰る」というパターンが多いかな。忍び猟だと林道から遙か遠くで獲ることが多いため、そうなるわけです。

(林道の近くで獲れたときは丸ごと持ち帰るという選択肢も出てきます)

ぼくは「できるだけ可食部は持ち帰りたい」と思っています。両足、両腕、ロース、ヒレ、ハツ、レバー、タンなど。それらを現地でザックリ切り分けて、背負うとたぶん20kgは越えるはずです。かー!大変。もともと持っている荷物も含めれば30kg前後になるでしょう。

もちろん、体力に自信がないなら、持ち帰る肉を絞るという選択肢もあります。

 

3.解体〜精肉にかかる時間が長い

解体も精肉も1人でやるので、なにしろ時間がかかります。

現地で解体するのも慣れないし、自宅に帰って冷凍するために精肉するのもひと苦労。冗談抜きで3〜4時間かかっちゃったりします。15時に獲物を獲って、現地解体〜下山〜自宅で精肉を終える頃には20時を越えているのも普通です。翌日仕事だったりすると結構大変ですよ。

 

4.縄張り問題・猟隊とのバッティングもある

いわゆる縄張り問題に巻き込まれたことはありませんが、やはり話には聞きます。ぼくが経験したことだと、早朝、日の出のタイミングで山に入っていたら、後から来た人が猟犬を入れてしまい、こちらが猟にならない、という自体になったことはあります。

「せっかく来たのに……しかも先に入っているのに……」と苛立つ気持ちもありますが、トラブルを回避するためにもぼくは山を降りました。

グループでやっている人は気楽に場所を移しにくいのに対して、こちらはソロ。気軽に移動できますからね。黙って気持ちを入れ替えて場所を移動するのが正解だと思ってます。

 

5.地元の猟仲間が増えにくい

ひたすら単独猟だけにこだわっていると、地元の猟友が増えません。

いまはSNSを通じて猟仲間自体は増えるのですが、みんな遠くのどこかに住んでいるわけです。実際に猟を始めてみるとわかるのですが、土地勘を共有できる仲間がいるとやっぱり頼りになったりします。

「そっちどうだった?」
「だめだめ。でもあっちは良かったらしいよ」

みたいな情報交換ができるわけです。正直にいえば最初の2年間、そういう仲間は1人もいない状態でやっていました。それでも努力すればなんとかなりますが、少しはそういう仲間ができてきた今振り返ると「最初からそういう仲間がいた方が楽だったかもなぁ」とは思います。

(一方、誰も知らない・知られていない気楽さというのもある)

 

いかがでしょうか?

結論を言えば、単独忍び猟だと獲物は獲れないし、いざ獲れれば解体に長時間かかり、肉の持ち帰りは重労働、縄張り問題やら、猟隊とのバッティングが起きることもあり、地域の仲間は増えない

なんとも過酷な猟ですな。笑

 

最初にも書きましたが、ぼくはこれらをあまり「短所」とは思っていません。

獲物が獲れなくてもおもしろいし、解体に時間がかかるのも、肉の持ち帰りが大変なのも当たり前(「登山は疲れる」的な話)、縄張り問題などはそんな頻繁に起こることも出ないし、仲間がいなくてもなんとかなる(これだけは信頼できる仲間がいた方がいいな、と思うようになりました)。

 


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。2022年からはアイヌ犬のイチを連れて一銃一狗に挑戦します。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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