『熊と猟師』リアルな熊狩りの様子が読み取れる1冊

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今日ご紹介するのは『熊と猟師』。柳田佳久という日本シューターズ協会の会長にまでなった人の著作です。

この本のおもしろさはリアリティ。伝聞でも、調査の記録でもなく、本人の体験記であることです。

『熊と猟師』

この本の内容をザッとまとめるなら「著者である柳田佳久さんの熊狩の記録」です。

そして彼のおもしろいところは、ただ豪傑な自分を演出するでもなく、感傷に浸るでもなく、ときに豪快に、ときに感傷的に、そしてときに分析的に自分を見ていることです。

とくに分析的な一面はとても興味深く。しかも強いリアリティを持って読み手に訴えかけるものがあります。実際に山に入り、熊狩りをしたからこそ感じるいろんなことがとてもおもしろい。たとえばこんなのはいかがでしょう?

(何日も山小屋に泊まりながら熊狩りをしていたときのエピソード)
新しい小屋について若い小マタギが炊事を始めたころは暗くなり冷え込んできた。
中央の焚火は慣れたマタギが燃すので景気よく燃え、時々パチッとはじけた。焚火から離れている小屋の内部は、当然のことではあるが薄暗い。そして炎の動きに合わせてその蔭が怪しくうごめく。わたしは都会で、ムードを出そうとして暗いライティングのレストランなどに入ると、山での熊狩り床屋の雰囲気をしみじみと思い出す。
このわたしのフィーリングは一般の都会生活者にはなく、周りにいるお客たちとはまったく異質のものであることと思う。

いかがでしょう? わたしはすごくリアルな感覚だと思いました。伝聞じゃ書けないリアリティってこういう所に現れると思うんです。

もう少し見ていきましょう。

マタギ話で良く聞く怪談

マタギ関連の書籍を読んでいると、けっこう怪談話(あるいは単純に正体不明の不思議な話)というのが良く出てきます。

そういう話を集めた『山怪』という書籍があるほどです。

さて、この『熊と猟師』にもちょっとした怪談話が出てきます。

(予定外の場所で露営することになった著者。火を焚き、雪の上で眠ろうとしているときのこと)
何時間たったであろうか、あまりにも悲しい、糸を引くような細く長い哀れな声に、わたしは「ハッ」として目が覚めた。「ヒーヒヒヒ、ヒー」……。私は体中の毛が逆立って、ゾォーッとし、全身凍る思いで、真っ青になった。そうっとライフルに手を伸ばし、手前に引き寄せた。

山の中で露営した経験がある人ならば、この恐ろしさが想像できると思います。山の夜というのは想像力を高めます。風の音ひとつで鳥肌が立つこともあるものです。

著者はこの「ヒーヒヒヒ、ヒー」という声を何度も聞きます。

私は非論理的なことや、非科学的なことは、まったく信じない類いの人間であるが、こうなると子どものころ聞いた幽霊やキツネ、タヌキの化かしなどといろいろばかばかしい話がモクモクッと頭に湧いてくる。

このあとも声は何度も聞こえてくる。そのたびにライフルを構える。すると音が消える。落ち着くとライフルを元の位置に戻す。しばらくするとまた声が……。

そんなことを繰り返しつつ、原因を考える。「絶対に科学的根拠があるはずだ」と。

そしてしばらくして判明する。実はライフルの銃口に風が当たって音をたてていたのだ、と。

ライフルを動かすと音が消えるけど、ちょうどいい場所に置くと風が吹いて、ちょうど瓶に空気を吹き込んだときのように音が鳴る。

言ってみれば「それだけ」って感じのエピソードですが、よく考えてみるとこれは雪山に露営するときに感じる不安感をうまく表現していると思うのです。大の男が、しかもライフルでクマを撃っているような山の男がこんなことでも怯えて銃を抱えてしまう。それくらい雪山は不安を煽る、というわけです。

熊の生態

ページの多くは熊に立ち向かう著者のエピソードですが、後半に『熊の生態』についてまとめている章があります。熊の出産や冬眠前後の習性、食性など詳細にわたる著者なりの分析を紹介しています。

熊狩りに興味がある人にとってはきっといいとっかかりになるのだろうと思います。

またあまり紹介しませんでしたが、熊狩りの様子も迫力のひと言です。熊狩りに興味がある人はぜひ。

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