ファーストエイドキット?サバイバルキット? 6つの非常用バッグの定義を比べてみた

最終更新日

登山・サバイバル・ブッシュクラフト、あるいは災害対策系の動画を見ていると、サバイバルキット、エマージェンシーキット、ファーストエイドキットなど、いろんな種類の非常用バッグが登場します。

わたし自身、これらの判別が曖昧で、ブログの記事を書くときも「これはエマージェンシーキットでいいのか? それともファーストエイドキット?」とちょっと曖昧なときがありました。

今日はいろんな非常用のバッグ・キット類の定義について勉強してまとめてみたいと思います。

 

※ わたしも勉強しながら書いているので、勘違いや間違いがあるかもしれません。ぜひツッコミをお願いします。

※ 人によって定義が異なる部分もあるかと思います。あくまで一例としてご理解ください。

ファーストエイドキット(First-Aid kit)

軽度の傷や病気の症状に対処するための道具類です。

怪我をしたから絆創膏を貼る。頭が痛いから頭痛薬を飲む。こういった比較的「間に合わせ」の処置ですね。

どこまでを「軽度の傷や病気」とするかは判断が分かれるところでしょうが、概ね「命に別状がない」を基準にしているようです。

ちなみにWikipediaにおける First Aid Kit の日本語訳は「救急箱」とされています。英語版と比べてあまりに貧弱な内容なので、とくに参考にする必要はないと思います。なにしろ「救急箱」の1行目が——

救急箱とは、応急処置のために使用される薬品や医療器具を収納した箱のことである。

ってな具合。ファーストエイドキットが箱である必然性はありません。

《参考》

WHAT’S THE DIFFERENCE BETWEEN A FIRST AID KIT AND A TRAUMA KIT?

First Aid Kit (Wikipedia)

トラウマキット(Trauma Kit)

ファーストエイドキットの上級版と言える概念です。

ファーストエイドキットが「軽度な傷や病気」を対象とするのに対して、トラウマキットは「重度な傷や病気」を処置するためのキットです。

Trauma kits are meant to deal with major injuries, typically life-threatening, and to keep someone alive until expert medical care can be reached.
A hospital and/or doctor is most likely needed.

《翻訳》
トラウマキットは深刻な怪我に対応するためのものです。つまり死の危険にある患者を的確な医療従事者の元まで生きたまま送り届けるためのものです。
医療従事者は持っているべきものでしょう。
引用元:WHAT’S THE DIFFERENCE BETWEEN A FIRST AID KIT AND A TRAUMA KIT?

たとえば出血多量の危険、身体の一部を欠損する大けが、そういった自体に対処するための道具です。治すための道具ではなく、正しく処置ができる病院まで届けるための道具ですね。

ファーストエイドキットに比べて、ずっと高度な処置となり、いい加減な知識で使うのは望ましくありません。

しかし激しい出血を止めるセロックスなど、比較的使いやすい道具が市販されていますので、医療従事者以外でも使いこなせるかもしれませんね。

《参考》

WHAT’S THE DIFFERENCE BETWEEN A FIRST AID KIT AND A TRAUMA KIT?

ハイジーンキット(Hygiene Kit)

ハイジーン(hygiene)とは衛生状態という意味です。

つまりハイジーンキットとは「衛生的に過ごすためのキット」です。

歯ブラシ、タオル、石けん、バンダナ、ティッシュ、トイレットペーパーなどなど、衛生的に過ごすための道具類を指します。

「そんなもん、緊急事態に必要か?」

という意見もあるかと思いますが、私個人としては2つの理由でおろそかにできない、と考えています。

1つ目の理由は極端な非衛生状態は病気を招くから。たとえば「緊急事態だから歯は磨かない」は1〜2日なら良いとしても、1週間2週間と続けば、虫歯を発症し、被災地生活をより一層辛いものにしてしまいます。

2つ目の理由は「精神的な平穏を取り戻せる」ことです。被災し、緊張が続く中で、温かいお風呂に入るのはキレイになるためではなく、心が落ち着くからでもあります。歯を磨く、顔を洗う、髪を洗う……、こういった日常的な行為をおろそかにしないことで、落ち着いて行動できる心を作ることができる、と思います。

《参考》

Hygiene Kits

サバイバルキット(Survival Kit)

この概念はあまりに広く、「どうとでも捉えられる」言葉です。ある意味では、今日紹介しているすべての概念の上位に立つと言えます。英語のWikipediaを見てみましょう。

survival kit is a package of basic tools and supplies prepared in advance as an aid to survival in an emergency

《翻訳》
サバイバルキットとは緊急事態・非常事態の中で生き残るための道具や備蓄品を入れたパッケージのことです。
引用元:Survival kit (Wikipedia)

とにかく「生き抜くためのもの」ですね。中身は

  • どれくらいの非常事態を想像するか?
  • 自分の生活スタイル・生活圏
  • 自分のスキル

などによって大きく違ってきます。

「ひと晩だけインフラ(電気・水・ガス)が停止する」という災害を想定するか、「エイリアンの襲来で地球が滅亡」を想定するかで、用意するものは違いますからね。

また災害が起きても比較的早く救援物資が届く地域もあれば、アクセスが悪いせいで日数がかかる地域もあるでしょう。

このサバイバルキットという概念をより狭めて、具体的にしたのが、次に説明するゲットホームキットとかバグアウトキットです。

またわたしもよく使う言葉である「エマージェンシーキット」は、どうも、ほぼほぼこのサバイバルキットと同義語のようですね。

《参考》

Survival kit (Wikipedia)

ゲットホームバッグ(Get-Home Bag)

ゲットホームバッグはサバイバルキットの下位概念です。

It is a survival kit designed to get you home in the event that a catastrophic disaster occurs while you are away.

《翻訳》
これは外出中に大災害が起きたとき、自宅まで帰り着くことを想定してデザインされたサバイバルキットです。
How to Build a Get Home Bag

上記の定義を引用した How to Build a Get Home Bag というサイトがとてもわかりやすく、概念からその中身まで説明してくれています。

上記サイトの筆者いわく、ゲットホームバッグは 24-hour bag とも呼ばれ、災害後の24時間を切り抜けるために必要なものを詰めています。

あくまで「災害後に外出先から帰宅すること」を目標にしているため、「毎日持ち運べるサイズ」というのは絶対条件です。

いつも車で行動している人は比較的多めの荷物があってもいいでしょうが、電車で通勤するサラリーマンがリュックサックいっぱいのゲットホームバッグを持って行動するのは難しいでしょう(これも人によりますが)。

また、登山などの野外活動で持っていくサバイバルキットとしては、このゲットホームバッグの考え方が近いと言えます(というか、まさにこれ)。遭難したとき、家に帰るためには何が必要か? と自問して組み立てるべきバッグです。

バグアウトバッグ(Bug-Out Bag)

このバグアウトバッグもサバイバルキットの下位概念であり、ゲットホームバッグのお兄さんにあたります。

バグアウト(Bug-Out)という言葉は聞き慣れない人も多いかと思います。Bug Outで「さっさと逃げる(ウィズダム和英辞典より)」という意味です。

さて、バグアウトバッグとはなんでしょうか?

A ‘Bug Out Bag’ is a pre-prepared survival kit designed to sustain you through the journey to your destination once you’ve decided to ‘Bug Out’ in the event of an emergency
《翻訳》
“バグアウトバッグ” とは大災害により(自宅などから)避難すると判断したとき、安全な場所まで移動するために必要となるものをまとめたサバイバルキットである。
引用元:How to Make a Bug Out Bag: Your 72-Hour Emergency Evacuation Survival Kit

つまり災害が起き、自宅が倒壊の危険などで安全ではないとき、避難所や安全な地域まで移動するのに必要なものを入れておくべきバッグです。

ゲットホームバッグが 24-hour bag 呼ばれるのに対し、こちらは 72-hour bag と呼ばれます。

また、移動しないとしても、インフラが完全に停止した状態で、近くに避難所が設置されるまでの数日間を自宅で過ごすためのキットと考えることもできるかもしれません。

また、 “Personal Emergency Relocation Kits” (PERKs)” や “get out of Dodge” (GOOD) kits” といった似た意味合いの言葉もあります。いずれも「安全な場所まで行こう」という目的は同じです。

《参考》

How to Make a Bug Out Bag: Your 72-Hour Emergency Evacuation Survival Kit

イメージできましたか?

駆け足ではありますが、よく聞く言葉をまとめてみました。

当然、これらの概念には上下関係や入れ子になるものもあります。また、状況によっては似通ってしまうバッグも出てくるでしょうし、結果的に混ざるバッグもあるかと思います。

たとえばゲットホームバッグにはきっとファーストエイドキットが入るでしょう。

バグアウトバッグにはファーストエイドキットはもちろん、ハイジーンキットもはいるでしょう。多少のトラウマキットを入れる人もいるかもしれません。

あるいはファーストエイドキットの中にトラウマキット的な荷物が入る人もいるでしょう。

ただ、わたしとしては、こういういろんな概念を知ることで、自分が持っている緊急用のバッグを見直すいい判断材料ができたと思っています。

ほかにもいろんな緊急事態用のキットやバッグがあると思います。「これが漏れてるぞ!」というご意見がありましたらお知らせください。それらも取りあげていきたいと思います。


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。2022年からはアイヌ犬のイチを連れて一銃一狗に挑戦します。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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